SUBARUが今秋アメリカで発売する3列シートの新型SUV「アセント」(右)と売れ筋の「アウトバック」(左)。アメリカでのSUV販売がスバルの成長を牽引してきた(写真:SUBARU)

新車の出荷時に行う完成検査工程において、さまざまな不正が蔓延していたSUBARU。吉永泰之前社長は、生産台数が増える中、品質問題は喫緊の課題であるとして試行錯誤していた。しかし、完成検査工程での不正に気づき、正すまでには至らなかった。中村知美新社長は今年7月に発表した新中期経営計画で、会社の変革を誓った。改革を成し遂げることはできるのか。

好調なアメリカ事業に異変

スバルの成長を牽引してきたのは紛れもなくアメリカだ。2018年3月期の販売台数は約67万台とこの5年で2倍近くになった。同時にアメリカへの依存度も高まった。販売全体に占めるアメリカの比率は5割から6割を超えるまでになった。

ここにきて、そのアメリカ依存が裏目に出ている。販売奨励金(インセンティブ)の上昇だ。アメリカではブランド力を落としたくないという考えから、他メーカーと比較すると低水準に抑えていた。むしろブランド力を強みに、インセンティブ競争から距離をとることができた。

しかし、アメリカ市場全体がピークアウトしたうえ、スバルが得意とするSUV(スポーツ多目的車)に競合他社がこぞって新商品を投入してきたことで状況が変わる。スバルも販売奨励金を上積みせざるをえなくなった。2018年4~6月期決算で会社が示した1台あたりの販売奨励金は2500ドル。前年同期の1800ドルから4割近く上昇した。アメリカでの販売比率が高いことも響き、収益が圧迫されている。

リーマンショック以降、業績が順調に回復してきたスバル。2016年3月期には円安の追い風もあり、営業利益は過去最高を更新した。だが、その後は下落を続ける。2019年3月期は営業利益3000億円を見込むが、前期を2割も下回る。営業利益率も9%の見込みで、6期ぶりに1ケタ台に落ち込む。アメリカの販売奨励金増加に加え、業績悪化の一因となっているのが品質問題だ。

品質問題も収益を圧迫

「コストより品質確保が最優先」──。高い技術力と安全性能に自負のあるスバルは、昔から何よりも品質を重視してきた。しかし近年は、その品質に疑問符がつく事態になっている。リコール(回収・無償修理)が急増しているのだ。この10年の生産台数の伸びは2倍弱であるのに対し、リコール台数はタカタのエアバッグ問題に関連する台数を除いても3倍に増加している。特に2016年3月期以降の伸びが顕著だ。製品保証引当金も増えている。

品質については、昨年5月に東洋経済が吉永泰之社長(当時、現会長)に行ったインタビューで、この未来を予測するかのような発言を残していた。

吉永泰之・前社長(現会長)は2017年5月のインタビューで品質への懸念を示していた(撮影:今井康一)

──業績が踊り場に差し掛かった今こそ、気を引き締める部分はあるか。

「品質で何か問題が起きたら、そのブランドは一発で崩れる。もし何かで足をすくわれるとすればそれは品質だろう。リコールが増えていることを踏まえながら、『本当の実力を見つめ直してほしい』と少し頭を冷やすような話もしている」

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