自民党総裁選に岸田・野田両氏の姿はなかった(撮影:尾形文繁)

自民党総裁選挙は告示以来、国会議員票のみならず地方票でも、3選を目指す安倍晋三首相の圧倒的優位で推移した。国会議員票で5派閥の支持を受けた安倍首相は党所属国会議員の9割近くを押さえており、独裁国家の権力者さながらの強さだ。

財務省の決裁文書改ざん問題などを生んだ政権のあり方の刷新を訴えた石破茂元幹事長を安倍首相が圧倒することで、懸念される点がある。改ざんやそれに絡んだ近畿財務局職員の自殺が起きるきっかけとなった学校法人森友学園問題や、首相秘書官との面会をめぐり経済産業省首脳と愛媛県知事が応酬を繰り広げることになった加計学園問題への安倍政権の対応が容認され、政権をめぐる状況がリセットされかねないことだ。

なぜ、安倍首相の夫人が名誉校長を務めた学校法人に国有地が格安で売却され、安倍首相の腹心の友が理事長を務める学園が国家戦略特区で学部を新設できたのか。事の発端をめぐる謎さえ解明されない。にもかかわらず、「みそぎ」のように政治的に決着させていいわけがない。

そもそも、総裁選は自民党トップに対する所属国会議員と党員・党友の審判であり、世論全体の審判ではない。国民の判断の一端は報道各社の世論調査に表れている。JNNの調査では「首相にふさわしい人物」として安倍首相と石破氏がわずか1ポイント差で拮抗しているのである。安倍首相が石破氏を圧倒という自民党の判断との溝は埋めがたいほどに深い。