地銀の中で別格とされてきたが、行内で不正が常態化していた(撮影:梅谷秀司)

「数字ができないなら、ビルから飛び降りろ」「おまえの家族を皆殺しにしてやる」──。

個人向けに特化した独自のビジネスモデルで成長し、地方銀行の中では別格とされてきたスルガ銀行。だが、好業績の裏で不正が横行し、ノルマが達成できない行員には罵詈雑言が浴びせられていた。

年明け以降、シェアハウス運営会社の経営行き詰まりで発覚したスルガ銀行の不正融資問題。株価は年初の高値から5分の1の水準となり、時価総額で5000億円近くが吹き飛んだ。第三者委員会が9月7日に公表した調査結果によると、書類改ざんなどの偽装はシェアハウス以外の収益不動産ローンにも蔓延していた。

虚偽価格で契約書を作成する、賃料収入を多く見せるなど、あらゆる偽装で融資額や担保評価額を吊り上げる行為があった。委員会が直接インタビューを行った行員のうち、「偽装に関与したことがある証拠がまったく見つからなかった者は一人も存在しない」という状況だった。多くの行員が不正に手を染め、黙認した背景にあるのが、過大な営業目標と過度なプレッシャーだ。元行員は本誌の取材に対し、「とにかく数字に追われて考える余裕さえなかった。何か指摘したら、上司に『だったら代わりの案件を出せ』と詰められるのが見えていた」と振り返る。

営業部門が聖域化 審査の独立性も毀損

創業家が権力を背景に経営を支配し、営業は現場の従業員に任せて、数字を上げることを厳しく要求していた。委員会の中村直人委員長は、「経営陣に問題が上がらないようになっていた」と指摘した。取締役会は1回当たり1時間ほど。多いときは10件程度の決議・報告事項があったという。調査報告書は「これでは説明だけで終わるに決まっている。最初から議論をする気はないといっているようなもの」としている。

一方、営業現場の中心にいたのが首都圏および大阪、名古屋などの広域営業を担う「パーソナル・バンク」を率いる専務執行役員だった。創業地盤の静岡と神奈川地域の新規融資が停滞する中、パーソナル・バンクが全体の業績を牽引しており、専務執行役員の発言力は増大。審査部門に圧力をかけ、融資承認率が99%を超えるほど審査を骨抜きにした。

こうした構図を作り上げ、企業風土の著しい劣化を招いた「主たる責任者」と委員会が認定したのが、岡野光喜会長の実弟である故・岡野喜之助副社長だ。光喜氏が対外活動とシステムを受け持つ一方、喜之助氏は業務執行全般を担当。2016年7月に逝去するまで長年の間、業務全般の実質的な最高意思決定者は副社長だった。

「専務執行役員が営業現場で隊長のように働き、暴れ回る。副社長などが指示、黙認していたので、誰も文句が言えなかった」(中村委員長)とされたが、「死人に口なし。副社長に罪をかぶせている」(スルガ元幹部)という見方もあり、真相はやぶの中だ。委員会は16年まで社長を務めた岡野会長にも、創業家トップとして「故副社長と同等の最も重い経営責任がある」としている。

いずれにしろ、強みとされた審査の速さ、他行が尻込みする物件にも融資する目利き力は虚像だった。検査を行っている金融庁からは厳しい行政処分が下るだろう。

収益不動産用が大半 貸倒引当金の増加も