なかぞら・まな●1991年慶応義塾大学経済学部卒業、野村総合研究所に入社。97年野村アセットマネジメントでクレジットアナリストに。社債や国債を分析。モルガン・スタンレー証券、JPモルガン証券を経て、2008年10月からBNPパリバ証券クレジット調査部長。11年から現職。(撮影:尾形文繁)

リーマンショックから丸10年。当時は過剰流動性からバブルが生じ、金融機関は信用リスクを甘く見た住宅ローン融資を行った。さらに、これを証券化して、格付け「トリプルA」のラベルを張り、投資家にリスクを転嫁。その後、住宅ローンが焦げ付き、証券化商品の価格は暴落、流動性は枯渇し、市場全体が機能不全に陥った。リーマン・ブラザーズが破綻し、AIGが政府管理下に置かれ、メリルリンチがバンク・オブ・アメリカに救済合併されるなど、米国金融業界の地図が数日間で塗り替えられた。まさに21世紀型金融危機であった。

そこからの教訓は生かされている。金融システムを通じた「連鎖倒産」のリスクを排除する仕組みが作られてきた。国際金融規制のバーゼルⅢは質も量も十分高い資本を銀行に要請。FDIC(米国連邦預金保険公社)はドッド・フランク法を通じて、大手行にリビングウィル(破綻処理計画)の策定・報告義務を課した。FRB(米国連邦準備制度理事会)はストレステストを実施して金融機関の資産の健全性を定期的に調査。ECB(欧州中央銀行)もストレステストを行っている。その結果、グローバルに重要な金融機関の資本状況は現時点で健全性を維持している。

しかし、危機自体に防止策はない。新たな危機の火種はすでにある。中央銀行によって供給された過剰流動性がどこにたまっているのかが、カギになる。信用市場から観察できる三つを指摘する。