超低金利に苦しむ地方銀行にとって、貸し出し拡大のために横並びの低金利競争を繰り広げる手法は限界に来ている。金融庁は、地銀では目先の収益確保が優先され、顧客や地域の経済環境を把握し融資判断を行う「目利き力」が失われていることを問題視。担保・保証がなくても事業に将来性がある企業や、信用力が低くても地域に必要とされる企業への取り組みが不十分だとしており、金融仲介機能の発揮を促している。

福岡銀行|不良債権処理の経験で企業を見る目を培う

そうした中、過去の経験を生かし、各行員の目利き力のさらなる向上や、担保・保証に過度に依存しない融資を進めているのが、福岡県内で預金・貸出金シェアトップの福岡銀行だ。熊本銀行、親和銀行を加えたふくおかフィナンシャルグループ(FG)の総資産は地銀トップで20兆円を超える。

福岡銀行は地元中小企業に対し、担保・保証の評価以上の融資を積極的に行っている。それを示すのが非保全の融資(不動産などの担保、保証協会保証が及ばない融資)の増加や融資総額に占める非保全率の上昇だ。同じような指標を開示する地銀は少ない。

これらを着実に進めるには、現場の行員が取引先の事業内容や成長可能性を適切に評価する力が欠かせない。福岡銀行の場合、2000年代初頭の不良債権処理で目利き力の土壌が培われた。同行は、01年3月期に1752億円の信用コスト(融資先の倒産などにより発生が予想される損失)を計上し、768億円の最終赤字となった。その中で、審査部門の中に融資審議室という特命チームを作り、融資先の実態を見極めるノウハウを培った。具体的には財務内容に基づく定量分析や、再生に向けた経営者の力量、事業の競争力を対象とする定性分析を徹底的に行った。「これが事業性評価の源流となっている」と、融資業務を統括する小林智執行役員は語る。

融資業務を統括する小林執行役員。2007〜09年に親和銀行、12〜13年には熊本銀行に出向し事業再生などに取り組んだ

一つの事例が、福岡県内の老舗百貨店の事業再生支援だ。従業員は3000名を超し、実態純資産は290億円の債務超過だった。業績不振から法的整理も視野に入る状況だったが、この会社が行き詰まるとブランド価値の毀損や社会的影響が大きいと判断し、私的整理ガイドラインの活用を決めた。再生のノウハウが豊富な東京の弁護士事務所や監査法人、コンサルティング企業から知恵を借り、資産売却や事業スポンサーの招聘、主力行として総額280億円の債権放棄などを実施。DES(債務の株式化)にも応じて、資本増強をサポートした。