本業のビジネスでデータを活用してきたグーグルは、社内の人事改革でもデータ分析力を発揮している(写真:Google)

働き方改革を推し進めるうえで重要なのは、まず従業員の現状や悩み、要望などを正しく、深く理解することだ。データと科学で働き方を変革するグーグルの専門組織「ピープルアナリティクス」でも、毎年全社的なアンケート調査を行っている。その背景にある考え方や効果的な手法とは。グーグル・ピープルアナリティクスのシニアマネジャー、キャスリン・ディカス氏に聞いた。

連載の締めくくりは、猫もしゃくしも“働き方改革まっしぐら”な日本企業に対する、ディカス氏の提案だ。経験則や「なんとなく」という感覚の意思決定を当たり前にしない、惰性の長時間労働を看過しないためには、どんなアプローチが可能なのか。

従業員アンケートもグーグル流

──働き方を見直すにあたり、従業員の声に耳を傾けることは非常に重要です。ただ、どんな方法で声を集めればいいのか、結果をどう反映すればいいのか、悩みを持つ企業は少なくありません。グーグルではそうした仕組みをどう構築していますか?

グーグルでは2007年から、「Googlegeist(グーグルガイスト)」という全従業員を対象にしたアンケート調査を毎年行っている。リーダーたちは、自分の周りの人だけの意見を聞くのではなく、グーグル全体の意見を聞く。リーダー同士の空気感ではなく、グーグル全体の空気感をとらえる。そのためにこの調査を行っている。

設問は経営者や上司(に対する意見)、企業文化などといった会社生活におけるあらゆる課題に及ぶ。年ごとのスコアの変化を分析できるよう、毎年同じ設問もいくつかあるが、従業員やマネジャーにとってその年その年で重要な項目も入れ込むため、設問数は毎年異なる。回答データは厳密に機密保持され、結果は部署ごとに集計する。 個人レベルまで特定する分析はしないので、匿名性が担保され、自分の上司についても自由に回答できる。

──ここで得られたデータは、具体的にどのように活用されるのでしょう? 従業員の評価に反映されるのでしょうか。

そういうことではない。グーグルガイストの集計結果は毎年、各人の年間評価が提出されてから1カ月以内というタイミングで共有される。良い結果も悪い結果も、全従業員に公開される。これにより、各チームの従業員とマネジャーは次の年の評価に向け、調査の中でスコアが低かった部分を認識し、改善するよう取り組むことができる。とりわけマネジャー陣は真剣に毎年の調査結果を受け止めているし、それを見ながら会社をよりよくする策を練っていく。

グーグル社内では、社員同士の率直なコミュニケーションが奨励されている(写真:Google)

──グーグルガイストのような全社的なアンケート調査をする際、従業員の正直な回答、質のいいデータを集めるために必要なことはありますか。

回答内容が真実かどうかを証明するのはなかなか難しいが、グーグルガイストを10年間運営する中で、2つの異なる調査方法で回答内容が変わるかを検証したことがある。一方は、100%匿名での調査。もう一方は、機密性の高い状態の調査だ。後者はつまり、個人までは特定できないものの、高度に分析すればどのグループが発言しているかはだいたいわかる、というレベルである。

2つの方法を試した結果、実は両者の間に回答の差は現われなかった。グーグルの従業員はそもそも、自分の意見をしっかり表明する傾向が強いのかもしれないが、どんな聞き方であっても、ある程度正直に話してくれると考えられる。一方で、グーグルガイストの結果は、それ以外の社内調査の結果ともつねに比較している。回答の傾向に差が出ていないか、従業員の声を正しい形で吸い上げられているかを確認するためだ。

──日本の会社は経営者の経験則や「なんとなく」で意思決定してしまうことが非常に多いと感じます。そういうリーダーに科学やデータを活用する重要性に気づいてもらうために、何が必要でしょうか。