週刊東洋経済 2018年9/15号
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現地ルポ! 雄安新区・北京・深圳… これが中国流イノベーションだ

国家の威信を懸けたハイテク実験都市 雄安新区

北京市内から高速鉄道に乗ることおよそ1時間半。小さな農村のあぜ道を抜けると突然、近未来的なビル群が現れた。ここは習近平政権が「千年の大計」として建設中の人工都市・雄安新区の中心地だ。

雄安は、上海・浦東や深圳に続く国家レベルの特区で、2017年4月に設立構想が明らかにされた。首都・北京の交通渋滞や不動産価格高騰など「大都市病」の解決が主目的だが、最先端テクノロジーの実験都市という役割も持ち、中国を代表するテック企業が最新のイノベーションを競っている。

(写真上)雄安新区の中心地は農村の畑に囲まれている (写真下)中国企業の視察団や周辺の村民、観光客も多く訪れていた

電気自動車(EV)の充電スタンドがずらりと並ぶ駐車場には、IT大手・百度(バイドゥ)の自動運転車両が停車。雄安の中心地である市民センターを一周する形で、自動運転車専用道路が敷かれ、自動運転技術の実用化に向けて日々実験が行われている。

(写真上)百度の自動運転車両。車体上部のセンサーで障害物や人物を認識する。駐車場にはEVの充電スタンドがずらり (写真下)通常の自動車道路に加えて自動運転専用道路が敷かれている

その敷地内を歩くと4輪駆動のロボットとすれ違った。中国EC大手・京東集団(JDドットコム)が実用化を進める自動配送ロボだ。「指定した場所にロボが着いたら、顔認証で荷物を受け取れる」(京東担当者)という。顔認証でチェックインや部屋の解錠ができる“未来のホテル”もある。

京東集団の自動配送ロボット。ユーザーが指定した場所にロボが着くと、顔認証で荷物を受け取れる。実験中だが、すでに一部実用化されている

市民センターには中国企業の視察団が多く訪れていたほか、周辺の村民や観光客の姿も目立った。実験都市として日本企業の注目度も高く、「商社や金融、電機大手などの調査担当者が続々と視察に訪れている」(JETRO海外調査部中国北アジア課の宗金建志氏)。

中心部から一歩外に出ると、大規模な工事現場と広大な畑が広がる。「35年までに高水準の社会主義現代化都市を建設する」という目標に向け、雄安の建設は静かに動き始めている。

民間主導の革新に沸く北京の中関村と深圳

官主導で最先端の実験が進む雄安に対し、北京と深圳では民間企業による下からのイノベーションが相次ぎ生まれている。

北京大学や清華大学など、中国随一の名門校が集まる北京・中関村は中国のイノベーションを長年リードしてきた。中関村内に拠点を置く医療機器メーカー・海斯凯尔(ハイスーカイアー)の孫錦副総裁は、15歳で飛び級し清華大学に入学したエリート。博士課程まで進み、08年に同級生と起業。今では肝臓分野の医療機器で中国シェア7割を誇る。すでに欧米や日本、インドに進出しており、海外市場でもシェア拡大を目指す。

北京の医療機器スタートアップの孫錦氏は15歳で清華大学に飛び級入学したエリート中のエリート。海外市場にも進出している

海斯の成長の背景には、清華大学のベンチャー育成のエコシステムがある。「起業に必要な知識は清華で学び、投資に必要な資金は清華から融資を受けた」(孫氏)。

北京ではこうした大学発のスタートアップが次々と生まれている。傘下でスタートアップ支援を行う清華大学系の投資会社・タス ホールディングスの陳鴻波副総裁は、「20年前の大学生は海外留学か国有企業、外資系企業への就職を目指していた。今は起業熱が高まっている」と変化を語る。

実際、中関村のインキュベーション施設「創業公社」には、300社以上の創業まもないベンチャー企業が登録している。現地で戦略コンサルティングを手掛ける呉柏翰氏は、「入居企業の入れ替わりは激しく、まさに多産多死だ」と話す。

創業まもないスタートアップが入居する北京のインキュベーション施設「創業公社」。入居企業の入れ替わりは激しい

ユニコーン量産 中国の"硅谷(シリコンバレー)" 

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