【今週の眼】早川英男 富士通総研エグゼクティブ・フェロー
はやかわ・ひでお●1954年生まれ、愛知県出身。東京大学経済学部卒。米プリンストン大学経済学大学院にて修士号取得。77年日本銀行に入行後、長年にわたって主に経済調査に携わる。調査統計局長、名古屋支店長、理事などを歴任し、2013年4月から現職。著書に『金融政策の「誤解」』。(撮影:梅谷秀司)

現在の景気に関する最大のパズル(難問)が「人手不足なのに賃金が上がらない」点にあるのは衆目の一致するところだろう。この点、従来筆者は長期雇用の正社員に注目し、足元の収益は好調でも、将来展望に自信のない企業(日本企業の大部分)は簡単に賃金を上げられないことを強調してきた。

だが本欄では、もう一つ別の観点からこの問題を考えてみたい。それは、現在の日本経済が労働力をどのように利用して、経済成長を支えようとしているかだ。そのために、アベノミクス期(2013年第1四半期〜18年第2四半期)を戦後最長景気期(02年第1四半期〜07年第4四半期、主に小泉純一郎政権の時期)と比較してみよう。

まず、生産年齢人口は最長景気期に累計約300万人減っていたが、アベノミクス期には約450万人へ減少幅が拡大した。一方、就業者数は最長景気期に約50万人増えたのに対し、アベノミクス期にはなんと約380万人も増えている。これを可能にしたのは、主に男性高齢者の就業増と中高年主婦の労働参加率上昇である。