医学部に来年入学する学生は、留年や休学をしなければ2025年にも卒業する。卒業から25年後の50年、バリバリ活躍している頃に、自ら選んだ診療科が廃れていてはあまりにも不幸だ。AI(人工知能)やロボットの開発が日進月歩で進む中、どの診療科に進んだらいいのか、これから医師になる若者の心得とは何かを『医療4.0 第4次産業革命時代の医療』(6月刊行)に登場する現役医師4人に聞いた。

──50年の医療はどうなっているでしょうか。まずは、いらなくなりそうな診療科から挙げてもらえますか。
森維久郎医師 「いらなくなる」というのは極端な表現ですが、病理料、放射線科、皮膚科など画像診断が主体の診療科の仕事は一定数、AIに置き換わっていくと思います。すでに画像診断については、AIと医師で同じ精度であるという報告も出てきているし、この流れを止めることはできないと思います。また腎臓内科としても、安定している人工透析患者さんの薬の調整などでも今後AIの役割が大きくなっていくと思います。

加藤浩晃医師 私も「いらなくなる」というのは極端な言葉だと思いますが、医師よりも機械がやったほうが上手な可能性があるという意味では麻酔科も候補に挙がると思います。
五十嵐健祐医師 脳神経内科の診断ではMRI(磁気共鳴断層撮影)など診断にしか価値がない仕事は今後厳しいでしょう。画像診断系以外では、どの患者にも同じ風邪薬ばかり処方している一般内科は今後いらなくなりそうです。医師が処方する風邪薬はOTC(一般用)医薬品として市販されています。処方箋がなくても薬局で買える時代にすでになっているのです。花粉症や胃腸炎の薬、痛み止めや湿布、ビタミン剤の処方、インフルエンザの予防接種で経営が成り立っているようなクリニックも同様。50年を待たずして、30年にも仕事がなくなっているのではないでしょうか。

風邪を診るのをやめたら患者が激減した
──五十嵐医師のクリニックでは風邪の診察をやめて患者数が激減したそうですね。