筆者は仕事柄、受験生とその親から相談を寄せられることが多い。子どもの教育に懸ける、特に母親の熱意には圧倒される。中でも、医学部を目指す多浪受験生の親からの相談は、祈りにも似た感情をその言葉の端々に感じる。

医学部入試の過熱ぶりを言うまでもなく、三浪以上の多浪受験生は3割程度存在する、その入試の様は、他学部には見られない独特の世界を作り出している。その担い手は主に世襲を望む親子である。医師という職業からは、金銭的な見返り以上に、患者の生命を支えるという絶対的なやりがいや、世界中どこでも尊敬される自尊感情を得ることができる。ここにファミリー全体が医師を輩出しているという状況が加わるなら、受験生本人の意志で医学部志望を降りるのは非常に困難である。武家に生まれた子どもが、武士以外の道を志すことと同じ困難さがある。

こういった状況になると、多くの親から「裏口」の有無を問われることは日常茶飯である。しかしそれに対する答えは「ない」というものが定番である。かつてはかなり信憑性のあるうわさが多かったが、現在は昔ながらの金銭だけを媒介とする裏口入学はないといってよい。その意味で東京医科大学事件は衝撃的ともいえる。そういった金銭がらみの悪評を払拭するために、多くの大学が工夫を重ねてきたからだ。

裏口入学ならぬ「裏の入試方針」とは