2008年に発表された「宗教的輸血拒否に関するガイドライン」文書

1985年、川崎市で交通事故に遭った10歳の少年が、宗教の教義を重んじる両親に輸血を拒まれ死亡した事件は、後にテレビドラマ化もされるなど、広く世間の関心を集めた。医師にとって救命できるのに輸血しないのは受け入れがたい。一方で信者はたとえ救命されても、神を裏切った負い目を持ち続ける。医師の裁量権、患者の自己決定権、親の代諾権などの問題が提起された事件だった。

「エホバの証人」(ものみの塔聖書冊子協会)は米国発のキリスト教系団体である。聖書は、動物の血を食することを禁じている。同教団では血は「命」を表しており地面に注いで神に返すもので、輸血も「血を食べる」ことと同じであると解釈されている。

東京都立墨東病院高度救命救急センター部長の濱邊祐一氏は、「輸血を拒否され他院に転送した患者もいれば、輸血をせずに何とか乗り切れたケースもある。現場レベルではそれなりに対応できている」と語る。

近年は、患者の権利としての自己決定権を尊重する傾向がある。しかし、なおも問題になるのは冒頭の「川崎事件」のような未成年のケースだ。