私の知人で寂しい男がいる。友達が一人もいないのだ。そればかりではない。知人は会社の経営者だが、全社員が彼を嫌っていて、軽蔑の域にまで達してしまっている。

そんな状態で会社として成り立つのかと思うが、面白いことに、共通の“敵”である彼の存在が、社員同士の強固な団結を生み、組織としては非常にうまくいっている。

それほどまでに嫌われるのには、彼の中に相応の要素がいくつかある。中でもいちばん強烈なのは猜疑心の強さだ。とにかく人を疑う。経理の計算が合わなければ直ちに横領の疑念を抱き、物品が行方不明になればすぐに「持ち帰った者がいる」と言いだすのである。

ところで私は、特殊部隊を辞めるまで、「あなたは、人を見る目がない」とよく言われていたし、自分でもそう思っていた。みんなが「あいつは、ろくなもんじゃない」とか「あいつは、信用できない」と言っていても、「そうか? そんなに悪いやつでもないだろう?」と言い返すことが多かったからだ。口に出さないまでも「悪く解釈するから、そう見える。良く解釈すれば、正反対にも見える」と思うタイプだった。