あんざい・たかし●1963年日本銀行入行。98年に日本長期信用銀行頭取として破綻後処理に奔走。2001年にアイワイバンク(現セブン銀行)社長、10年から18年まで会長。(撮影:今井康一)

「君しかいないよ」──。

日本長期信用銀行(長銀)の頭取になってほしい、と打診してきたのは、その年(1998年)の3月から日本銀行総裁となっていた速水優さんだった。当時、僕は日銀で信用機構の担当理事だった。金融システム全体の安定確保が緊急課題だったが、ほかにいい人がいない、ということだったので、じゃあ仕方がない。すぐに記者会見を済ませ、翌朝、小渕恵三首相のところへあいさつに行った。

幸いにも秘書官は面識のあった細川興一君(後の財務事務次官)だった。細川君のおかげで、小渕さんともすんなり話が通じた。長銀頭取になると、株式や金融債を大量に買ってくれていた大口投資家の元へ行った。ロッテの重光武雄オーナーからは「お疲れさまですな」とねぎらわれたが、某大手運輸会社や某ファストフード大手の社長からは「株を買って損をした」と怒られた。いろんな人間がいる、といい経験になった。