トランプ米大統領の首席戦略官を解任され、自らが会長を務めていた極右メディア「ブライトバート・ニュース」ともけんか別れしたスティーブン・バノン氏。同氏が今、欧州を変えると息巻いている。欧州連合(EU)本部があるブリュッセルに「ザ・ムーブメント」という団体を設立。EU打倒を旗印とし極右勢力の結集に動いているのだ。

バノン氏はこの運動をグローバルエリートに対する「戦争」と位置づける。だが、同氏は欧州に関する知識がまるで足りないようだ。

チェコの首都プラハで行われた討論会では、安価な労働力を持つ外国からの「不公正な競争」をこき下ろし、身内の聴衆をもあぜんとさせた。なにしろ、チェコの経済が輸出で潤っているのは、まさにバノン氏がやり玉に挙げる「不公正な競争」のおかげなのだから。

とはいえ、バノン氏にとって最大のハードルは、欧州極右陣営の足並みがまったくそろっていない点にこそある。バノン氏はハリウッド映画に感化されたキリスト教原理主義者で、自らを悪のフォースと戦う戦士だと考えている。一方、ハンガリーのオルバン首相は独裁者として反移民や反EUをあおってはいるが、同国経済はEUからの補助金などに依存する。オランダで極右政党を率いるウィルダース氏は、イスラムを西欧文明に対する最大の脅威と位置づける一方で、同性愛者の権利を擁護。ジョンソン元外相をはじめとする英国のEU離脱強硬派は、壮大なる英国流の国粋主義に酔いしれており、イスラムの脅威にはあまり関心がない。フランスで極右政党「国民戦線」を率いていたルペン氏は、党名を「国民連合」に変え、反ユダヤ・親ナチスという同党の過去を覆い隠すのに必死だ。