【今週の眼】三品和広 神戸大学大学院教授
みしな・かずひろ●1959年生まれ、愛知県出身。一橋大学商学部卒業。同大学大学院商学研究科修士課程修了。米ハーバード大学文理大学院博士課程修了。同大学ビジネススクール助教授、北陸先端科学技術大学院大学助教授などを経て現職。著書は『戦略不全の論理』など多数。(撮影:梅谷秀司)

「株主重視」と声高に叫ばれるようになって久しい。論理的には、それが「社員軽視」と連動する必然性はない。しかしながら日本では「株主重視」と「社員軽視」が表裏一体で進行する傾向が目立つ。社員の側に発想の転換が求められている。

「社員軽視」の象徴が、業績悪化時の給与やボーナスのカットである。企業が社員のものと認識されていた時代には、俸給カットは美談で済んだ。社員が俸給カットを甘受すれば、未来に向けて投資する原資を確保できる。ロジックとしては、現在の俸給と未来の俸給を社員がてんびんにかけたことになる。未来の業績向上から社員が恩恵に浴するかぎり、これはこれでバランスが取れていた。

ところが、企業が株主のものとなると、急に話がおかしくなる。売り上げから経費を差し引いた残余利益は、現在のものであれ未来のものであれ、株主に帰属するからである。社員が受け取る俸給は、業績とは無関係に人材市場の相場で決まるもので、この図式の中では経費の一部に該当する。