【今週の眼】小峰隆夫 大正大学地域創生学部教授
こみね・たかお●1947年生まれ。東京大学卒。経済企画庁経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長などを経て、2017年4月から現職。日本経済研究センター理事・研究顧問も務める。著書に『人口負荷社会』『日本経済論の罪と罰』『政権交代の経済学』など。(撮影:尾形文繁)

トランプ米大統領は、就任当初から保護貿易的姿勢を示して多くの人々を心配させたが、当初はそれでも「まさか貿易戦争に発展するようなことはあるまい」「日本の景気に影響するようなことはあるまい」と考えていた人が多かったのではないか。

ところが事態は信じがたいほど悪い方向に向かってしまった。まず、本当に報復合戦が始まった。3月に米国は鉄鋼、アルミニウムへの関税を引き上げ、6月には中国の1000以上の品目に25%の追加関税を課した。これに対し、中国は合計600品目以上の米国製品に25%の報復関税を課し、EUやカナダも追随した。

これは、相手がボートに穴を開け始めたので、対抗して自分も乗っているボートに穴を開けるようなまったくばかげた行動である。戦後世界が営々として築いてきた自由貿易への歩みを逆転させるものであり、世界貿易の縮小を招く効果しかない。

この貿易戦争は日本経済にも現実的な脅威となってきた。エコノミスト約40人に景気の先行きを尋ねるESPフォーキャスト調査では、半年から1年後の景気のリスク要因を定期的に調べている。今年2月には、リスク要因として「保護主義の高まり」を挙げたエコノミストは4人だけだったが、6月には22人に増えた。今後1年以内に景気の山が来るとする見方もじわじわと高まっている。貿易戦争は日本の景気拡大の持続性を脅かすリスク要因となりつつある。