昨年12月に発売された『痛い在宅医』(ブックマン社)は、在宅医療の負の側面を正面から扱った異色の書籍だ。著者の長尾和宏医師はあとがきの中で、「もはや美談だけで在宅医療を語る時代ではない」と記している。在宅医療のエキスパートにその真意を聞いた。

ながお・かずひろ●1984年東京医科大学卒業。医学博士。医療法人社団裕和会理事長。『「平穏死」10の条件』など著書多数。

──本では、ある在宅医の下でがんの父を看取った娘さんが、「父は平穏死できなかった」と不満を述べ、長尾医師がそれに答える形で話が進みます。

この10年、国の政策として自治体での地域包括ケアシステムの構築と在宅医療の拡大が推進されてきた。(多死社会には病院だけでは対応できないので)この政策は今後も続く。そうした中、いろんなメディアが在宅医療を美談として報じ続けてきた。

私は全国在宅療養支援診療所連絡会の世話人を務めているが、いろんな患者さんからクレームが届く。その多くは医師と患者のコミュニケーション不足によるものだ。残念ながら、現時点では診療所の機能やレベルがさまざまで、患者や家族のいろんなニーズにうまく応えられる状態になっていない。『痛い在宅医』に出てくる娘さんのケースもそうだった。

患者、家族、病院の医師、在宅医の4者があるとしたら、その思いはバラバラだ。誰かが悪いというわけではなく、みんなが同じ方向を向くことがいかに大変であるかを、この本を通して伝えたかった。よいところだけでなく、悪かったところも含めて、在宅医療のリアルな姿を議論し、よりよい形を作っていくべきだ。また、病院機能の評価の方法はたくさんあるが、現状、診療所は看取りの数や割合でしか評価されない。利用者(本人や家族)にわかりやすい形で、在宅医療の質を評価する指標を作ることが国の課題だ。

家での看取りには3つの覚悟