訪日外国人客が増える中、日本のホテルはどうあるべきか。元外資系証券会社の有名アナリストで、『新・観光立国論』の著書もあるデービッド・アトキンソン氏に聞いた。

David Atkinson●1965年英国生まれ。ゴールドマン・サックス証券などを経て、2009年小西美術工藝社入社。14年から現職。裏千家の茶名「宗真」を持つ。(撮影:今井康一)

──外国人の視点から見て、日本のホテルの課題は何でしょうか。

一番の問題は多様性がないことだ。安いホテルばかりができている。

その原因はいくつかある。1つは発想自体が貧乏くさい。戦後の爆発的な人口増加の中で培われた「いいものを安く」という考え方がはびこっている。

もう1つは調査・分析能力に欠けている。今は中国人や韓国人など、観光にかける予算が少ないけれど日本にたくさん来ている人に対応しているだけ。現状分析ではなく、日本に来ていない人がなぜ来ないのか、市場がどの程度大きくて、どこまで伸びる可能性があるのかといった潜在市場を調査・分析し、誘致する手を打っていない。大量生産的な発想で造られた低価格・低次元の昭和の観光インフラを使い続けるなら、日本の観光戦略は危ない。

多様性という意味では、日本には5つ星ホテルが足りない。日本よりも観光収入が多いタイには111(出所:Five Star Alliance、7月18日現在)あるが、日本は30(同)だ。5つ星ホテルの数とその国の観光収入の相関性は非常に高い。1人何万円もするすし屋に行く客は、安いホテルには泊まらない。日本は富裕層におカネを使う機会を提供していないということだ。観光産業を充実させるには、所得別にふさわしいホテルが必要になる。

こういう話をすると、「価値観や文化が違う」「そういう人たちは日本に来ていない」といった現状を正当化する反論が出てきて疲れる(苦笑)。富裕層に対応するホテルがないのだから、来ないのは当然だ。外資系の高級ホテルが日本に参入して、需要を喚起した事実もある。戦略的に仮説を立てて実行する日本の経営者が少ない。

──5つ星が増えると、日本のホテル産業はどう変わりますか。