フランス保健省はアルツハイマー型認知症(AD)で承認・販売されている四つの治療薬すべてを8月から公的医療保険の対象外とすることを決定した。ADの治療薬の有効性に疑念が生じ始めている。薬剤経済学が専門の東大・五十嵐中特任准教授に日本での影響などについて聞いた。

いがらし・あたる●1979年生まれ。2002年東京大学薬学部卒。08年同大学院博士課程修了。08年特任助教。15年から現職。10年から医療経済評価総合研究所代表を兼務。(撮影:梅谷秀司)

──薬剤の保険適用についてフランスの仕組みを教えてください。

フランスでは、薬の治療効果などの有効性と副作用など安全性の双方を、「有用性」としてまとめ、保険適用の判断基準とする。有用性は、無治療と比べた絶対的有用性SMRと、すでにある治療と比べた相対的有用性ASMRの二つに分けられる。SMRで国の負担割合が、ASMRで価格そのものが決まる。

SMRは「顕著・重要」「中程度」「軽度」「不十分」の4段階に分けられる。保険で負担される割合はそれぞれ65%、35%、15%、0%。今回、AD治療薬の4剤のSMRが最下位の「不十分」と判断されたことで負担割合が0%、すなわち保険適用外となった。

──4剤が保険適用外となる前兆はあったのでしょうか。