【今週の眼】苅谷剛彦 英オックスフォード大学教授
かりや・たけひこ●1955年生まれ。米ノースウェスタン大学大学院博士課程修了、博士(社会学)。東京大学大学院教育学研究科助教授、同教授を経て2008年から現職。著書に『階層化日本と教育危機』『増補 教育の世紀:大衆教育社会の源流』『教育と平等』など。(撮影:尾形文繁)

オックスフォードでワールドカップ(W杯)のテレビ中継を見た。フットボールの母国でもある英国のサッカー人気は日頃から高い。それに加え、今回はイングランドのチームがベスト4まで進んだことから、私の周辺でもW杯の話題で持ちきりだった。街を歩くと、白地に赤の十字のイングランド旗(ユニオンジャックではない)を見掛けた。試合のある日に街のパブに入ったら、大画面に映し出されたイングランドチームを熱狂的に応援する人々であふれ返っていた。

国際的な大学街であるオックスフォードでは、イングランド以外を応援する人々も少なくない。興味深いのは、イングランドが負けたクロアチア戦だ。同じ英国人でもイングランド以外の出身者はクロアチアを応援したという。この国ではナショナリズムがイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドに分かれていて、イングランドとその他の間には根深い心理的葛藤が残っているといわれる。ナショナリズムの区分が日本のように統一されていないのである。