きうち・たかひで●1987年から野村総合研究所所属。日本経済の分析、ドイツ、米国で欧米の経済分析を担当。2004年野村証券に転籍、07年経済調査部長兼チーフエコノミスト。12年7月から17年7月まで日本銀行政策委員会審議委員、この間独自の視点で提案を行う。17年7月から現職。(撮影:尾形文繁)

米中貿易摩擦が一段と激化してきた。トランプ政権は中国からの輸入品500億ドル分への追加関税を発動したのに続いて、2000億ドル規模の輸入品にも関税対象を広げる構えを見せている。

トランプ政権が強気を維持している背景は、米国が関税対象にできる中国からの輸入総額は2017年に5050億ドルと、中国の米国からの輸入額1300億ドルの4倍近くもあることだ。両国による報復関税の応酬となれば中国経済の受ける打撃のほうが大きく、そのため中国政府がいずれは譲歩せざるをえないという読みがある。

そのため中国側は、追加関税以外の手段を使って米国に対抗していくことを強いられている。その手段の一つが、為替市場で人民元安を誘導し、中国市場で米国製品の価格競争力を下げることだ。6月以降、人民元安が加速しており、すでに中国当局は人民元安誘導を実施している可能性がある。その目的は国内景気刺激にとどまらず、米国に対する報復措置という側面も持つのだろう。