ESG投資の拡大に邁進する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。今後、さらなる運用改革も必要となりそうだが、忘れてはならないのは、制度改革には政治が絡むことだ。

2014年のGPIF改革では、国債での運用比率が下げられた一方、国内外株式の比率が24%から50%へ引き上げられた。このことに対し、安倍晋三首相が進めるアベノミクスの株高を演出するためではとの批判が絶えなかった。

今回、本誌はGPIF改革に深くかかわった当時の厚生労働省幹部から歴史的証言を得た。そこで浮き彫りとなったのは、年金積立金という巨額資金を自分たちの思惑のために活用しようとする政官民の面々だった。今後の運用改革の教訓とするためにも、証言を基に前回のGPIF改革を振り返る。

「GPIF改革は、一言で言えば、アベノミクスを背景にした金融・資本市場政策と社会保障政策との交差点上で展開された改革議論。金融庁の政策、アベノミクス、成長戦略、そして公的年金の財政検証が複雑に絡み合っている」と元厚労省幹部は証言する。

金融庁はかねて日本全体の資金運用改革が必要だと考えていた。スローガン的に言えば「貯蓄から投資へ」。当時、国内の個人資産は現預金が全体の90%を占め、株式などリスク資産の構成割合は10%未満だった。生命保険会社など機関投資家も、国債中心の運用でリスク資産の比率は低かった。