

“ウイーン”と音を立てながら机の上を動き回る小型ロボットの横で、小学生が熱心にキーボードをたたいている。これは「ミニ四駆」などの模型でおなじみのタミヤが、この春から全国展開している「タミヤロボットスクール」の風景だ。
「保護者は、ミニ四駆世代やラジコン世代が多い」と話すのは、神奈川県の横浜中川教室で講師を務める藤島一広氏だ。塾講師の経験を持ち、現在は教育関連企業で働きながら同教室を運営している。
ロボットプログラミングコースでは、タミヤの「カムプログラムロボット」を使い、まずはロボットの組み立てからスタートする。ロボットにはモーターやギア(歯車)が搭載され、自分で色を塗ってカスタマイズできるなど、模型メーカーであるタミヤならではの特徴が満載だ。
授業は月2回で各90分。独自テキストを使いながら、ロボットが動く仕組みや、初心者向けのプログラミング言語である「BASIC(ベーシック)」を1年かけて学んでいく。
講師がホワイトボードにBASICのコードを書いて意味を説明すると、子どもたちはプログラミング専用子どもパソコン「IchigoJam(イチゴジャム)」にコードを打ち込んでいく。まだ習い始めて3カ月という受講生も、キーボードをたたく様子は慣れたものだ。

“よい失敗”はすぐに褒める
藤島氏は、「子どもにも保護者にも『プログラミングは面倒なものだ』と伝えている。初めは『コードなんて面倒くさい』と連呼する受講生もいるが、そういう子ほど熱心に通ってくれる」と話す。
タミヤロボットスクールで重視しているのは、トライアル&エラー(試行錯誤)だ。子どもの好奇心と悔しさをくすぐる授業を意識し、「たとえ失敗しても、それがほかの受講生の参考になる“よい失敗”だったときはすぐに褒めて、教訓を共有し合う」(藤島氏)。
授業の最後には、その日に習った内容を生かしてロボットを動かすゲーム大会を行う。小学生が飽きずに没頭できるように、学ぶだけでなく実践して楽しむというメリハリをつけている。
「ロボットをもっと改造したい。(コードを書かない)ビジュアルプログラミングより楽しい」(小学5年生男子)。教材は専用ケースに入れて持ち帰ることができるため、授業の内容を復習したり、ロボットを改造したりと、自宅でも楽しく学んでいるという。
藤島氏は「コードを打ち込むのはビジュアルプログラミングより面倒な分、思いどおりにでき上がったときの達成感が違う。世の中は便利になったが、その裏にある仕組みを学ぶことで、子どもたちの視野も広がっていく」とも語る。
タミヤロボットスクールの拠点数は約50。10月以降に九州など西日本を中心に、数十校を開設する予定だ。

鉄道会社も子ども向けのプログラミング塾を展開している。
関西地盤の「ProgLab(プログラボ)」は、2015年末に阪神電気鉄道と読売テレビグループの共同出資で誕生。今春には東京都内にも、JR中央ラインモールや東京メトロが運営する教室を開いた。
「この塾には、社会に出てから必要な力を育む要素がすべて詰まっている」と、ProgLabの代表会社であるミマモルメの小坂光彦社長は語る。
教材として使用するのは、「教育版レゴ マインドストーム EV3」。子どもたちはレゴのロボットを組み立てながら、さまざまな課題に取り組んでいく。“交通系ICカードの仕組みを作ってみよう”といった、鉄道会社ならではのテーマもある。
受講している小学3年生女子の母親によると、「パソコン画面の中で完結する塾とは違ってリアルのロボットを動かすため、親にとっては子どもが何をしているかがわかりやすい」という。
