南北・米朝首脳会談が開催されて非核化の進展が期待される中、北朝鮮の経済開放に関心が集まっている。北朝鮮経済分析の第一人者、三村光弘氏に今後の見通しを聞いた。

みむら・みつひろ●1969年生まれ。大阪外国語大学外国語学部、大阪大学法学部卒。法学博士(阪大)。2001年環日本海経済研究所入所、15年より現職。著書に『現代朝鮮経済』など。(撮影:尾形文繁)

──金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長による相次ぐトップ外交は、経済開放への布石との見方があります。

中国の改革・開放に照らすと、今の北朝鮮は1992年に当時の最高指導者・鄧小平氏が南巡講話を行った時期に当たるだろう。北朝鮮は、中国が80年代後半までに導入していた市場経済的要素をすでに取り入れている。

──米朝首脳会談では非核化が打ち出されましたが、経済にどのような影響を与えますか。

米国との関係が正常化されれば、北朝鮮経済の市場化が始まるだろう。中国にとっての深圳のような実験場として、すでに2013年以降、国内に25カ所の経済開発区を設置済みだ。現在はきちんと稼働はしていないが、米国との関係正常化により外資を呼び寄せたベトナムのような形で市場化が進むだろう。ただ、外国人が家族で生活できる都市は今でも平壌しかない。そのため平壌が経済開発区の機能を果たす可能性もある。

──市場化、市場開放を行ううえで、北朝鮮が抱える難問とは?

国営企業の民営化など所有権の問題だろう。これをやるのは難しい。生産手段などの私有化や所有権の導入には、国民が強く反発するうえ、憲法改正を必要とする。というのも、すでに北朝鮮には富裕層が存在する。彼らは非合法な手段や偶然のチャンスで財をなした。彼らとほかの国民との間の不平等、不公平への反感が高まっている。民営化や私有化を今行えば、富裕層の存在を国家が認めることになり、国民の不満が高まる。

一方で、合法的な手段で企業家になろうとしている国民もいて、実際に個人経営の企業がすでに存在する。このような現実を北朝鮮当局がどう認めるかも問題だ。