もりた・ちょうたろう●慶応義塾大学経済学部卒業。日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券、バークレイズ証券を経て2013年8月から現職。日本国債市場での経験は通算で20年超。グローバルな経済、財政政策の分析などマクロ的アプローチに特色。(撮影:大澤 誠)

日本銀行の金融政策がいつ「正常化」されるのかについての議論は、昨年11月に黒田東彦総裁が「リバーサルレート」に言及したところが、一つのターニングポイントになっている。「リバーサルレート」とは、「低すぎて金融緩和効果を減じてしまう金利水準」のことである。黒田総裁自らその存在を指摘したことで、日銀が金融緩和の「副作用」をいよいよ本格的に意識し始めたと、市場では認識されるようになった。

問題は、この「副作用」なるものがはたして正確に計測できるのかということなのだが、これは実際には困難な作業である。まず、一般的に「副作用」だと指摘されているものが、①銀行収益の減少、②年金・生命保険などの運用難、③市場流動性の低下など、一つにとどまらない。

①については、「銀行経営が傾いて信用創造機能が損なわれる」「銀行が収益を維持するために過剰なリスクテイクに走る」という二つの異なった論点があり、議論の集約が容易ではない。また②は、年金・生保の直接的な信用創造プロセスへの関与が銀行より限られていて、何をもって副作用というのかの判断が難しい。③については、ここへ来て国債の取引が歴史的な低水準に落ち込み、関心も高まっているものの、市場流動性が実際に経済の効率性にどの程度影響しているのかの計測はそもそも難しい。