今、日本各地の高速道路を奇怪な自動車が走り回っている(上写真)。屋根部分にGPS(全地球測位システム)アンテナ、全方位カメラ、レーザースキャナーと、見慣れないものを多数搭載しているゼンリンの高精度計測車両だ。

ゼンリンは地図情報の国内首位企業。この車両で集めているのは、自動運転用の高精度3D(3次元)地図を作るためのデータだ。自動運転になると、「システムが自分の現在地を正確に把握し、その先に何があるかを先読みして、必要な動作を車に行わせる必要がある」(ゼンリンの竹川道郎IoT事業本部長)。従来の2次元情報だけでなく、高さも含めた3次元で高精度な情報が求められる。

北九州市のゼンリン本社(撮影:尾形文繁)

たとえば行く手に急傾斜の長い上り坂が現れたとする。人間であれば頂上まで見渡し、坂と理解できる。が、自動運転用のセンサーは認識できる画像範囲に限りがある。坂道を前にしたセンサーが範囲いっぱいに道路を認識すると、自動運転車は壁と判断してしまい、急ブレーキをかけたり、曲がったりしかねない。高精度3D地図であれば、坂の高さや長さを示せ、坂であることを自動運転のシステムに認識させることができる。

車載センサーが認識できる範囲は限られている。より広い範囲の情報を補完する地図が自動運転には必須だ。ゼンリンは2次元の地図データで圧倒的な競争力を持つ。自動運転用の高精度3D地図でも首位を確保するため、開発を急ぐ。

データ収集・整備の膨大な手間が難問

人間による運転が前提の2次元の道路地図は、道路単位の把握でよかった。しかし、自動運転用の地図は、各道路を車線(レーン)単位で把握する必要がある。直進専用レーンや右折・左折専用レーンがあるのかないのか。交差点を過ぎた後、それらのレーンは次の道路にどうつながっていくのか。道路単位ではなくレーン単位の情報が不可欠だ。

しかも、自動運転用のシステムが読むため、人間の目で見る場合の見やすさよりも精度が優先される。必要な情報の量は膨大だ。

高精度3D地図の一例。システムが読むことを優先するため、人間には見慣れないデザイン