ダイキンを世界一のエアコンメーカーに引き上げた井上礼之会長。今後の成長をどう描いているか(撮影:今井康一)

ダイキン工業は6月5日、2020年度に売上高2兆9000億円、営業利益3480億円を目標とする経営計画を発表した。

同社は5年ごとに5カ年の経営計画を策定することを慣例としている。ただし、この時点での最終年度の数値は「ありたい姿」を示したもの。それを折り返しの3年目に現実的な数値に見直すやり方を続けている。今回はその3年目の見直しのもの。当初の「ありたい姿」から若干数値を下げたが、そこに着実に近づいていることが確認された。

井上礼之会長には第1回、第2回と空調事業に限らない経営の要諦を聞いてきた。第3回はダイキンの主力、空調事業の課題と将来について。

──2009年度以降、連続増益が続いており、業績は絶好調です。そうした中で、大きな課題は米国市場です。2012年に買収したグッドマンとの相乗効果はまだ十分に引き出せていません。

おっしゃる通りです。家庭用空調にはダクト式(大型室内機からのダクトで各部屋を冷やすいわゆるセントラル空調)と部屋別に空調するダクトレス式の両方がある。米国はほとんどがダクト式。一軒家は玄関も廊下も風呂場も冷房暖房が行き渡っている。日本と欧州はほとんどがダクトレスだ。

今、ダイキンが世界で一番遅れているのが米国なんです。ダイキンは空調で世界トップだが、米国は4位でしかない。米国での空調事業は2回失敗して、2005年に3度目の進出をした。

2007年に買収したマレーシアのOYLインダストリーズは米国で大型空調を展開するマッケイインターナショナル(現ダイキンアプライドアメリカズ)を傘下に持っていた。2012年にはダクト式で米国トップのグッドマンを買った。これで品揃えはできた。

米国は(大型を含む)空調の世界最大市場。キヤリア、トレイン、ジョンソンコントロールズという空調大手のおひざ元でもある。米国で勝ってこそ、ダイキンは名実ともに世界のトップ企業になれる。「FUSION20」(2016年度から2020年度の5カ年計画)では米国を最重点市場と定め、買収を続けて技術開発の専務も米国に駐在させてやっているが、なかなか思った通りにはいっていない。

米国の新工場。工場も巨大だが作っている空調機器もやはり大型だ(写真:ダイキン工業)

──米国をもう一段加速させるには何が必要でしょうか。

商品開発ですね。米国にマッチする商品を当社の得意技術で作れたら勝てる。得意技術が何かといったら、まずは冷媒。温暖化係数が一番低く、オゾン破壊係数はゼロのR32という冷媒があり、日本は3~4年前にすべてそれに変わっている。インドも変わってきた。米国はまだ410Aという温暖化係数が高い冷媒が中心なので、ロビー活動を通じて地球環境に優しいR32にしていく。

次が空気中の熱を利用して冷房や暖房をするヒートポンプ技術。米国企業はあまり持っておらず、ダイキンが一番得意とする技術だ。

さらにインバーター技術(出力を細かく制御する技術)。ノンインバーターをインバーター化すると約30%の省エネになる。中国では珠海格力電器という中国最大手と提携し、ロビー活動をして法律も変えて、6〜7%だったインバーター比率を5年間で65%くらいまで引き上げることができた。それが中国で高い利益率を上げられる原点になっている。

米国でも環境に優しいとインバーターやヒートポンプ、新冷媒の普及についてロビー活動もやっていきたい。それができたらダイキン製品は大ヒットになる。

ところが、キヤリアやトレインはダイキンの一人勝ちをさせないためにR32は使わないで410Aでいこうとしている。ヒートポンプやインバーターにもあまり興味を示さない。だから、われわれはそれをどう政治を動かし、環境技術で展開するか。それがこれからの非常に重要なところですが、なかなか思うようにいかない。その意味で去年ワシントンD.C.に駐在員事務所を設けた。

アジアが巨大市場になる

──そのほかで成長が期待できる市場はどこでしょうか。