ドイツのコール元首相がこの世を去って1年が経つ。1982〜98年と長きにわたって国を率いたコール氏の遺産を引き継ぐかどうかで、ドイツはいま岐路に立たされている。

コール氏にとってドイツとは、戦争責任を負いながらも、欧州で中心的な役割を担わなければならない国だった。そのようなドイツが手前勝手に振る舞うことは絶対に許されないと同氏は考えた。

だが、2015年秋に移民・難民危機が発生して以来、「欧州の中のドイツ」という同氏のビジョンには逆風が吹いている。ドイツのメルケル首相は欧州連合(EU)加盟国が協調して問題に対処するよう強く訴えてきた。ドイツが利己的な行動に出れば、犠牲になるのはほかのEU加盟国だからだ。が、ドイツでは単独行動を求める声が鳴り響いている。

ドイツを悩ませている難民問題は、一見すると亡命希望者をほかのEU加盟国に追い返すかどうかをめぐる争いのように映る。だが、本質的に見れば、これはドイツが欧州の一員として行動するのか、それともわが道を歩むのかという、国の基本方針にかかわる問題だ。