週刊東洋経済 2018年7/14号
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あのメガベンチャーがついに上場した。6月19日、東証マザーズに上場したメルカリ。同社の初日の時価総額は7172億円(終値ベース)と、創業からわずか5年で、日本マクドナルドホールディングスに次ぐ水準となった。ベンチャー界だけでなく、株式市場関係者の話題をさらった。

いま日本には、第4次ベンチャーブームと呼ばれる波が来ている。2017年のベンチャーの資金調達額は2791億円。これは最も少なかった12年の4.3倍の水準となる。金融緩和や13年以降に相次いで設立された官製ファンドなどにより、ベンチャー市場にリスクマネーが流入。近年は、大企業もベンチャー投資にのめり込み、市場拡大に拍車をかける。

AI、宇宙、創薬…100億円級調達が続々

ベンチャー企業1社当たりの調達額も大きくなっている。17年の資金調達額ランキングを見ると、1位のプリファード・ネットワークス(東京大学発のAI〈人工知能〉ベンチャー)をはじめ、2位のスコヒアファーマ(武田薬品工業の事業を切り出した創薬ベンチャー)、3位のispace(月面探査を目指す宇宙ベンチャー)と100億円級の調達が続いている。

国内では、過去10年間で100億円を超える調達は4件しかないが、うち17年度だけで2件を占める。平均調達額は3億円と、5年前の約3倍の水準だ。ベンチャーキャピタル(VC)大手ジャフコの井坂省三パートナーは、「バリュエーション(企業価値の相場)は高くなりがちだが、バブルという感覚はない。ポテンシャルがあるベンチャーに対して、大きく勝負を仕掛けてスケール(規模拡大)できるようになった」と評価する。

資金の出し手にも大きな変化が出ている。従来、日本のベンチャー投資をリードしてきたのは、ジャフコやグロービス・キャピタル・パートナーズといった大手VCだった。しかし17年には、事業会社本体や傘下のファンドによるベンチャー企業への投資(コーポレートベンチャーキャピタル=CVC)額が、VCのそれを上回り、最大の投資主体となった。

背景にあるのは、日本企業の危機感だ。「AIをはじめ、デジタル化の波が押し寄せる中、大企業がベンチャー企業のアイデアや技術を取り込んで生き残ろうとする、オープンイノベーションの動きが加速している」(KPMG FASの岡本准パートナー)。

AIによる深層学習に強みを持つプリファード・ネットワークスには、17年にトヨタ自動車が100億円超の出資を行ったほか、過去にはファナックやNTTも出資に参画。自動運転や工場の自動化など、事業分野強化へベンチャー企業の持つ技術の取り込みを急ぐ。

同年8月には、IoTプラットフォーム大手のソラコムが、KDDIによって買収(買収額は非公表)されるなど、国内では珍しかった事業会社によるベンチャーの買収事例も出てきている。

メディアや不動産のような国内が主体の産業の中にも、ベンチャー発掘に熱を上げる大企業が出てきている。朝日新聞社は、17年8月に20億円規模のベンチャー投資ファンドを組成。「新たな勢力によって、新聞や出版事業がディスラプト(崩壊)する中、われわれも外に打って出ないといけない」(朝日メディアラボベンチャーズの野澤博ディレクター)。

三井不動産は、今年5月に300億円規模のファンドの投資事業開始を発表したほか、東京ミッドタウン日比谷のワンフロアに巨大な大企業向けのオープンイノベーション支援施設を開設した。

同社のベンチャー共創事業部を統括する光村圭一郎氏は、「テナントに入る企業がイノベーションを求めているのに、ただオフィスを提供するのでは価値がない。CVCで非不動産事業を開拓し、そのノウハウも提供していく」と話す。

ユニコーン企業数では米中が圧倒的

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