『声のサイエンス』を書いた山﨑広子氏に聞く あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか

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「いい声」の人の言葉にはなぜ説得力があるのか。

声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか (NHK出版新書 548)
声のサイエンス―あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか (山﨑 広子 著/NHK出版新書/820円+税/247ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──生涯で最も多く聞く「音」が自分の声なのですね。

意識されることは少ないが、それだけ絶大な力を実は秘めている。人の心を動かし、揺さぶり、自分自身の心身さえ変えていく力を持つ。声にその人のすべてが出てしまう。人間は声による奇跡の積み重ねで作られている。

──奇跡?

声は人間の脳と聴覚と発声の驚異的な連携の賜物だ。人間は、連携をほとんど無意識に行い、同時に他人の話まで聞くという離れ業を当たり前のようにやっている。

──新生児も6カ月を過ぎると声を発するようになります。

それも突然話せるようになったと思うかもしれないが、そうではない。それまでに膨大な音を聞き、脳の中で話すための音の回路を1年ぐらいかけて形成する。新生児が発音を楽しむような声を発するのは、それまでに聞いたすべての音を脳に蓄積しているからだ。

──声に専用の器官はないとも。

声帯が声を出す器官だと一般に思われているが、そうではない。声帯は気道に異物が入らないようにするための門のようなもの。発声には肺から出す呼気を利用するが、その強さを意識しているわけでもない。声帯が振動した原音は声ではない。ブーという小さい音なので、それが声になるためにはその上の部分の共鳴が必要で、声道をはじめ体のすべてが共鳴することになる。

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