週刊東洋経済 2018年7/7号
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誤解だらけの老後のおカネ

「病気」「孤独」と並び、定年後の三大不安と称されるのが「おカネ」である。

フィデリティ退職・投資教育研究所が今年4月、約1万人のビジネスパーソンを対象に行ったアンケート調査によれば、定年後の不安として最も多くの人が挙げたのが「生活費の不足」だった。

60歳で定年を迎えると、収入は激減する。定年後再雇用では年収はほぼ半減、新天地を求めるにしても好条件の就職先は少ない。

生活費は確かに減る。といっても、統計によれば減少幅はそれほどでもない。70歳代前半の月間消費支出は、30歳代後半の額とほぼ同じだ。大きな出費である食費や水道光熱費はあまり減らず、医療費や冠婚葬祭への支出はむしろ増えるためだ。

平均寿命は、今後も延び続けていくのは間違いない。「100歳まで続く人生」が、ますます現実味を持って世の中に受け入れられつつある中、老後の長い無収入期をどう生き抜けばいいのか。

世間に流布する常識の非常識

ちまたには老後のおカネに関する情報や“処方箋”があふれている。だが、その通説の多くは一面的であったり、正しい理解がされていなかったりする。

たとえば「定年後までに必要な金融資産」は、退職金を含めて3500万円を目指せばよい、という見方がある。しかし本特集に掲載したシミュレーションでは、一見十分目指せそうな家計でも夫が77歳、妻が75歳の時点で資金が枯渇するという結果になった(→関連記事へ)。住宅ローンの残債や子どもの教育費という負債の要素を考慮せず、通帳に書かれた貯金の額だけで安心してはいけない。

公的年金はさらに誤解が多い。最たるものは年金制度自体が廃止になるという見方だが、久留米大学の塚崎公義教授は指摘する。「そんなことになったら大量の高齢者が生きていけず社会が崩壊する。財政が窮しても橋や道路への支出が先に止まり、年金支給停止は後になると考えるのが普通だ」。

お得な受給方法として評判の「繰り下げ」にも注意が必要だ。

受給開始時期を65歳より遅らせることで年間受給額を割り増す方法だが、一方で差し引かれる税金も増えること、加給年金の開始時期も後ろ倒しになるデメリットはあまり知られていない(→関連記事へ)。

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