米朝首脳会談について、まとめてみる。6月12日の米朝首脳会談後の記者会見でトランプ米大統領が、北朝鮮による日本人拉致問題について〈「安倍首相にとって重要な問題だ。(金正恩[キムジョンウン]氏に)提起した。合意文書には盛り込まれなかったが、今後協議する」と述べた〉(6月12日「朝日新聞デジタル」)ことが大きく報じられている。トランプ氏による仲介を、日本のマスメディアは肯定的に報道・評価している。

しかし、客観的に見て日本にとって危険なのは、拉致問題に対する再調査の回答を金正恩・朝鮮労働党委員長がトランプ氏に対して行うことだ。北朝鮮側の回答の内容が、日本として受け入れがたい代物である可能性が高いからだ。日本が北朝鮮と直接交渉しているならば、このような回答は受け取りを拒否することができる。

しかし、トランプ氏が仲介に入るとそうはならない。トランプ氏と金正恩氏の間に信頼関係が確立している。次回の米朝首脳会談で、金正恩氏がトランプ氏に「これが拉致問題に関する真相だ。安倍晋三首相に伝えてくれ」といって手紙か口頭メッセージを託す可能性がある。トランプ氏としては、金正恩氏の依頼を受け入れるであろう。北朝鮮の回答が日本として受け入れがたい内容である場合、仲介した米国の立場を困難なものとするリスクがある。この観点から、日本政府は北朝鮮との直接交渉を近未来に再開する方向に動くと筆者は見ている。

6月12日、〈安倍晋三首相は米朝首脳会談について、「朝鮮半島の完全な非核化に向けた、金正恩委員長の意思を改めて文書の形で確認した。このことを、北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けた一歩だと支持いたします」と述べた。また、「拉致問題について先般トランプ大統領に対して私からお話をしたことを、しっかりと言及していただいたことを評価」するとした。/拉致問題が合意文書に触れられていない点については、「最終的に解決していくのはまさに日本の責任において二国間の問題として、日朝で交渉しなければならない問題」とした〉(6月12日「朝日新聞デジタル」)。

日本として、唯一の同盟国である米国の立場を支持するのは、外交ゲームのルールからして当然の成り行きだ。ただし、日本人拉致問題が米朝間の外交課題になることのリスクを安倍首相は十分に認識しているので〈日本の責任において二国間の問題として、日朝で交渉しなければならない問題〉であるとの認識を明確にしたのだ。