6月12日、シンガポールで、米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長(兼国務委員会委員長)が会談した。日本の新聞の評価は厳しい。

〈朝鮮戦争が休戦状態になってから65年。敵国同士だった米国と北朝鮮の首脳が初めて会い、握手を交わした。/その歴史的な進展に世界が注目したのは当然だったが、2人が交わした合意は画期的と言うには程遠い薄弱な内容だった。/最大の焦点である非核化問題について、具体的な範囲も、工程も、時期もない。一方の北朝鮮は、体制の保証という念願の一筆を米大統領から得た。/公表されていない別の合意があるのかは不明だ。署名された共同声明をみる限りでは、米国が会談を急ぐ必要があったのか大いに疑問が残る。〉(6月13日朝日新聞朝刊社説)

〈2016年の大統領選時には、金氏とハンバーガーを食べながら核問題を話し合う構想を口にした。今回の首脳会談は、形にとらわれずトップ交渉で問題解決を図ろうとする姿勢の表れだろう。/だが、第三国で行われた首脳会談は「政治ショー」の色彩がつきまとった。金氏の訪米を招請したのもトランプ流だろうが、その成否は今後の推移で判断するしかない。焦点はもちろん、北朝鮮が速やかに核廃棄に着手するかどうか、である。〉(6月13日毎日新聞朝刊社説)

〈核・ミサイルの放棄へと事態が大きく前進したとみなせる要素は見当たらない。トランプ氏は会談前に自身のツイッターで「本物のディール(取引)」とつぶやいたが、不発だった。/北朝鮮から核・弾道ミサイルなどの脅威を取り除くうえで、具体的にどのような状態を目指すか。その「目標」と、時間的目安も含む「道筋」について、はっきり決められなかった。/北朝鮮の政策転換は、独裁者である金委員長に直接、約束させるのが有効だ。今回の首脳会談は、その絶好の機会だったのに生かすことができなかった。〉(6月13日産経新聞主張)

日本世論の北朝鮮に対する忌避反応を考慮すれば、新聞がこのような社論を打ち出すのは当然のことだ。しかし今回、トランプ氏と金正恩氏が署名した共同声明の内容は、北東アジアの安全保障環境を変化させる重要な性格を帯びたものだ。日本での報道は、米国と韓国の情報源に基づくものが多い。本稿では、北朝鮮政府が事実上運営するウェブサイト「ネナラ」(朝鮮語で“わが国”の意味)に掲載された情報を読み解くため、オシント(OSINT: Open Source Intelligence、公開情報諜報)の手法を用いて分析してみたい。