復興の空間経済学 人口減少時代の地域再生
復興の空間経済学 人口減少時代の地域再生(藤田昌久、浜口伸明、亀山嘉大 著/日本経済新聞出版社/3600円+税/288ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
ふじた・まさひさ●京都大学経済研究所特任教授。米ペンシルベニア大学大学院博士課程地域科学専攻修了。同大学教授、経済産業研究所長などを経る。
はまぐち・のぶあき●神戸大学経済経営研究所教授。米ペンシルベニア大学大学院地域科学研究科博士課程修了。神戸大学経済経営研究所長などを経る。
かめやま・よしひろ●佐賀大学経済学部教授。東京都立大学大学院都市科学研究科博士課程単位取得後退学。国際東アジア研究センターなどを経る。

多様性がもたらす規模の経済に代わる集積力

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

1933年の三陸沖津波。被災地の人口は一時的に減少したが、豊かな自然資源を背景に、人口流入が再開し、短期で復興を遂げた。だが今回は、7年が経過した今も思うように復興は進んでいない。東日本大震災は人口減少時代で初めての大災害だったのだ。

本書は、成長の源泉となる都市や産業への集積がいかに生じるかを分析する空間経済学という新しい分野の世界的権威が、理論を応用し、復興の処方箋を論じたものだ。地震列島であるがゆえ今後も起こり得る大規模災害からの復興という視点と、今後の急激な人口減と超高齢化の下で一国経済全体としての復興という二つの視点で解決策を探る。

被災地は、多くの地域と同様、団塊ジュニアの流出と共に90年代に人口減が始まり、2000年代には東京への一極集中を背景に人口減が加速していた。日本が人口拡大期にあるのなら、規模の経済でダメージを修復する集積のメカニズムが自生的に働く。しかし、このままでは、さらなる人口流出は避けられない。

ただ、三陸にはブランド化が可能な自然資源が存在する。近年のインバウンドの取り込みには遅れたが、魚食文化を発信し輸出を強化すれば、若い世代に安定収入を提供する産業の構築が可能となり、人口も定着する。日本人の魚消費量は減少が続くが、アジアをはじめとする豊かになった世界の人々の間でヘルシーな魚食ブームが広がっている。

その際、規模の経済に代わり集積力をもたらすのが多様性である。地域コミュニティの魅力が多様性で高まると、人が集まり、さらに多様性が増すポジティブ・フィードバックが始まる。外部人材の取り込みや他地域のコミュニティとの連携がきっかけになるという。都市の盛衰は人口増加時と減少時では単に逆の過程をたどるわけではないため、発想の転換が必要なのだ。

三陸のような資源を持っていないと嘆く地域も多いが、「そこにあるものが見えていないだけ」だと叱る。アイデアさえあれば、あらゆるものが資源になるとして、地域の成功例を紹介する。

日本経済全体については、人口減が停滞の主因ではないと喝破する。知識創造社会への移行にもかかわらず、工業時代の発想から抜け出せていないのだ。一極集中で成長する東京も同質的な人材ばかりの集まりと手厳しい。多様な地域を維持すると同時に世界に国を開き、知の交流と人材の流動化を推進することが解決策ということだろうか。