金正恩委員長は、米朝首脳会談の会場となったシンガポールを訪問。中国国際航空の専用機を利用した(©︎ZUMA Press/amanaimages)

2018年6月2日、トランプ米大統領はツイッターで「貿易戦争に負けるわけにはいかない」と述べた。トランプ大統領は、すでに貿易戦争が始まっているという認識を示したのだ。そして、負けてはならない相手は中国である。

トランプ大統領は、中国に対して経済的圧力を強めている。米国通商代表部(USTR)は、「知的財産権の侵害」を理由に中国を世界貿易機関(WTO)に提訴し、米通商法301条を発動する予定だ。発動されれば、中国から米国に輸出される約1300品目に25%の関税を上乗せすることになる。

また、米国は中国の通信機器大手の中興通訊(ZTE)に対して取引禁止措置を取り、同社は倒産の危機に陥った。同じく通信機器大手の華為(ファーウェイ)技術には、米司法省が違法輸出の疑いで捜査を始めている。

こうしたトランプ大統領の対中経済的圧力によって、米中の経済力・技術力の差が、中国国民の目にも明らかになってしまった。中国が経済的に米国に追いつくのを米国が容認せず潰しにかかる、というのは中国共産党指導部が一貫して警戒してきた事態である。それが現実のものとなるように見える。

中国は、米国が軍事力を用いて中国の経済発展を妨害するのを恐れ、軍備増強を加速している。17年10月に開幕した中国共産党第19回全国代表大会の「報告」で習近平総書記が述べたように、中国は、今世紀半ばまでに世界一流の軍隊(米軍に比肩する軍隊)を作るとしている。それまでの間、軍事衝突回避のために、中国は米国に対して抑止や譲歩などさまざまな手段を用いなければならないのだ。