山田進太郎(やまだ しんたろう)/早稲田大学在学中、楽天でのインターン時にオークションサービス「楽オク」を立ち上げる。卒業後、2001年にウノウを設立。数々のネットサービスを立ち上げ2010年同社を米ゲーム会社・ジンガに売却、2012年ジンガを退社。2013年2月にメルカリ(旧コウゾウ)を創業。(撮影:梅谷秀司)

今日6月19日、メルカリがいよいよ東証マザーズ市場に上場する。国内でフリマ市場の急拡大を牽引してきた流通革命児の新たな“船出”には大きな注目が集まっている。短期的な利益は追わず、「人」「テクノロジー」「海外」に積極的に投資する――。そう明言する同社は、上場の先にどんな成長戦略を描くのか。創業者でCEOの山田進太郎氏に、余すところなく聞いた。

好機は一つも逃したくない

――このタイミングで上場に至った経緯は。

これまでさまざまな資金調達手段を比較検討しながら経営してきたが、サービスの知名度が上がる中で、「社会の公器」になる必要があると感じた。上場企業というステータスを得ることで、年配の男性など顧客層を拡大できる可能性もある。今後、(昨年11月に設立した)子会社の「メルペイ」が決済・金融サービスを始めるうえでは、会社の信頼性を高めることも重要だ。そうした総合的な判断があり、上場の準備を進めてきた。

――昨年は「年内にも上場へ」という報道もありました。金融庁など、関係各所との調整が難航した部分があったのでしょうか。

難航したという感覚はない。ちょうどいいタイミングでの上場だと思っている。ただ、われわれのスタートアップとしての意識と、世間から求められる責任にはギャップがあり、安心・安全の面などでそれに気づくのが遅かったという反省はある。上場にあたってはいろいろな関係者としっかり話し、メルカリの方針を理解していただけるようなプロセスを踏んだ。

――上場を前に、「創業者からの手紙」を公開しました。

フェイスブックやグーグル、アマゾンといった米国企業も同じようなことをしている。IPO(新規株式公開)は会社を知ってもらういいチャンスだ。経営者が今何を考えているか、わかりやすく示したかった。社内的にも、従業員が1000人を超えてきたので、うちの会社が大事にしていることを改めて確認・周知する意図もあった。そのために、今回は外に公開したものとは別に、社員用の手紙も用意している。

上場後の“野望”について、山田氏は淡々と、だが明確に語ってくれた(撮影:梅谷秀司)

――手紙の中では、「Go Bold(大胆にやろう)」という経営方針を強調しています。上場すれば投資家の厳しい目にさらされますが、大胆な意思決定や投資を継続できますか。

改めて決意したところだ。これまでも一般的なセオリーとは異なる、まさに「Go Bold」なやり方で、日本のメルカリを軸に飛躍的な成長を実現してきた。次は海外でもっとやれるんじゃないか、メルペイで金融もできるんじゃないかと、周辺領域でたくさんの可能性が膨らんでいる。好機は一つも逃したくない。

目指すのは安定的成長ではなく、2倍、3倍、5倍、10倍という非連続的成長だ。短期的には収益が落ち込むことになっても、チャンスがあるなら大胆に投資をする。そんな会社の考え方を支持してくれる方に株主になってもらいたい。当面は売り上げ規模の拡大に期待を持って、応援してもらえればと考えている。

だからこそ、投資はディシプリン(規律)を持って行う。見込みがないのに投資し続けることはない。たとえ悪くない成果を出している事業でも、小さいビジネスに終始してしまいそうなら撤退し、別のところにリソースを割くという判断もする。

アプリの見た目は変わらずとも、中身はどんどん進化

――メルカリはサービス投入から5年目に入ります。アプリとしては古株といわれる領域ですが、伸ばせる余地は。

国内の月間アクティブユーザー数が1000万人強まで来た。だがネット業界の巨人を見れば、LINEが7500万人、ツイッターが4500万人、フェイスブックが2800万人。その水準は当然射程に入る。1人当たりの売り上げももっと上げられる。成長のためにやらなければならないことがまだ残っている。

まず欠かせないのが、テクノロジーだ。社内では「感動出品」と呼んでいるが、写真を撮るだけで、商品のカテゴリー、ブランド、値段など、入力に必要な項目を自動的に提案する機能を取り入れた。この精度を高め、出品の完了率、取引の成立率を上げていきたい。

そのほかにも、アプリのトップ画面に表示される商品一覧をよりパーソナライズされた形にしたり、不正(利用規約違反)出品を自動で検知したりする機能を強化する。アプリの表面的な見た目は変わらなくても、中身はどんどん進化させている。

開発スピードを加速するため、体制も見直している。タイムライン、出品、検索など、各領域を「マイクロサービス化」する新しいアーキテクチャー(システム構造)を取り入れていく。足元ではエンジニアやデザイナーが数百人という規模になった。1000人、数千人の規模になると、この仕組みが必須になる。