【今週の眼】柳川範之 東京大学大学院教授
やながわ・のりゆき●1963年生まれ。慶応義塾大学通信教育課程卒業。93年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。東京大学助教授などを経て2011年から現職。主著に『法と企業行動の経済分析』『独学という道もある』など。(撮影:今井康一)

世の中には、販売や製造の規模が大きくなるほど費用やその後の販売が有利になる、いわゆる「規模の経済効果」が強く働く産業やビジネスモデルがある。

ただし、この効果が働くと安易に考えて失敗するケースも少なくない。たとえば、業界1位の販売量を実現できれば、宣伝効果が強く働き、将来の利益拡大につながるはずと単純に考えてしまうケース。安易な安売りで無理に販売量を増やした結果、それを上回る将来の利益増が実現できないこともある。したがって、どのような規模の経済がどの程度働くのかを見極めることは大切だ。

そんな中、近年はマクロ的な構造要因により、この規模の経済の働き方に大きな変化が生じている。その一つは、人工知能の発達やデータ解析の進展である。比較的知られるようになったとおり、人工知能は大量のデータによって学習していく。そのため、データが集まれば集まるほど、うまく機能する。データ解析全般においても、データの規模が大きいほど有利に働くタイプの技術革新が起きている。