米国のトランプ大統領の特徴は、徹底したプラグマティストであるということだ。しかもその射程はつねに短い。現下の状況で自己の権力基盤を極大化することを考えている。

6月12日にシンガポールで予定されていた米朝首脳会談について、5月24日にトランプ氏が会談中止の書簡を公表したのも、それによって関係国を揺さぶったのも駆け引き(ディール)だった。中止表明によって関係国が動いた結果がトランプ氏にとって有利な状況を作り出すならば前言を翻して首脳会談を実施し、不利な状況になるならば中止という方針を変えないという、両にらみの戦術を取った。

トランプ氏の首脳会談中止表明は北朝鮮のみならず韓国にも大きな衝撃を与え、外交的に大きな動きが生じた。5月26日、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長が会談した。前回の会談が4月27日だったので、1カ月足らずの29日で再会談に至った。外交の常識に照らすと異例の事態だ。日本の報道は韓国からの情報源によるものなので、ここではあえて北朝鮮の発表を基に分析する。

翌27日、北朝鮮政府が事実上運営するウェブサイト「ネナラ」(朝鮮語で“わが国”の意味)はこう報じた。〈歴史的な第4回北南首脳対面と会談がチュチェ107(2018)年5月26日、板門店のわが方の地域の統一閣で電撃的に行われた。/朝鮮労働党委員長・朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長であるわが党と国家、軍隊の最高指導者金正恩同志が板門店の統一閣へ出向いて文在寅大統領と対面して会談を行った。/北南関係の新しい出発と和解・団結の新時代を開いた平和の象徴として全世界の耳目が集中された歴史の地、板門店で29日ぶりに北と南の最高首脳たちの意義深い対面が再び成された。/金正恩委員長は、板門店分離線を越えてわが方の地域の統一閣に到着した文在寅大統領を温かく迎え、対面のあいさつを交わした。/会談に先立って文在寅大統領は、板門店のわが方の地域の訪問を記念して統一閣の芳名録に「韓半島の平和と繁栄、朝鮮民主主義人民共和国の金正恩委員長と共に! 2018.5・26 大韓民国大統領 文在寅」という一文をしたためた。〉