もりた・ちょうたろう●慶応義塾大学経済学部卒業。日興リサーチセンター、日興ソロモン・スミス・バーニー証券、ドイツ証券、バークレイズ証券を経て2013年8月から現職。日本国債市場での経験は通算で20年超。グローバルな経済、財政政策の分析などマクロ的アプローチに特色。(撮影:大澤 誠)

5月下旬、欧州金融市場に動揺が走った。5月中旬まで2%程度だったイタリア国債の10年物金利が、一時3.5%近くまでハネ上がり、逆に0.6%台だったドイツ国債の10年物金利が、「質への逃避」で買われて、一時0.2%割れまで急低下した。イタリアでポピュリスト政権成立の可能性が高まり、2010〜12年の欧州債務危機における「ユーロ崩壊」の懸念が、再燃したのだ。

しかし、現実にはイタリアの「ユーロ離脱」は英国の「EU(欧州連合)離脱」よりはるかにハードルの高い話である。数日間で1.5%ポイントに達する国債金利の急騰は、現実に起こりうる事態に比較して、極端すぎる動きといえる。

その意味で、今回の突発的な動きは、2月に起きた米国株価急落とも相通ずるところがあるように思える。すなわち、政治やファンダメンタルズの動きが一種のトリガーを引く形で、経済の実体以上に、短期間かつ大幅に市場が振れたという点においてである。こうした動きが生じる背景には、主要国による長く続いた空前絶後の金融緩和が、縮小し始めている影響があるのではないか。