私が入社した翌月に取締役会で報告したのは「安全資金の目標設定」でした(写真:Natee Meepian/iStock)

筆者が財務部長の時にパナソニックは7000億円を超える赤字を2回計上、ネット資金は▲1兆円まで悪化し、地獄の苦しみを味わいました。全社レベルの資金創出活動により2年あまりで実質無借金になりましたが、その時に得た教訓は以下の3つです。

1. つねに資金の苦しみを忘れない「資金重視の経営」
2. 真剣に回収可能性を検討する「適正な投資判断」
3. 攻め・守りのための「資金調達への備え」

この教訓を基に、グリーでも資金改善に取り組み、現預金が総資産の3分の2、自己資本比率9割の盤石な財務体質に変わることができました。

「資金は企業の血液」

私が入社当時のグリーも、規模は違えど当時のパナソニックと共通点がありました。積極投資の失敗・減損による収支悪化・資金の減少などです。ただし、メーカーと比較すると、運転資金は小さく債権回収や在庫削減という論点はほとんどありません。 

当時の経営はゲームの一本柱で、限界利益率が高いだけに売り上げが止まると、一気に利益や資金は悪化しました。ゲームは当たりはずれに大きく左右されるため、ボラティリティは高く、キャッシュフロー創出力は安定しません。ヒットする確率を上げるために血のにじむような努力をしていますが、ゲームのリッチ化・開発期間の長期化・賞味期間の短縮化等で大きなリスクを抱えていました。今は事業の多角化に取り組み、2本目3本目の安定的な収益の柱の創出に取り組んでいます。 

「資金は企業の血液」と言われます。血液が止まるのではないかという社内の危機感は強く、私が入社した翌月に取締役会で報告したのは「安全資金の目標設定」でした。一言で言うと、「毎年のCF目標を決め、1年分の固定費に見合う資金を3年間で貯める」という宣言でした。その後目標を上回るスピードで資金は改善していきました。

資金の推移(筆者作成)

まず、取り組んだのは標準支払サイトの設定と徹底です。当時は標準支払サイトの概念が無く、実態分析すると、契約書よりも早く払っている例が散見されました。当社のポリシーとして標準サイトを決め、取引先にご説明して合意を取るという、当たり前の取り組みを粘り強く行い、資金は改善していきました。今の運転資金は月商1カ月分未満となっています。

投資効果を事前に徹底的に確認する

また、投資も最初の2年間は抑制しました。投資する場合には、以下の二つをルールとして徹底しました。 

1. その投資効果を事前に徹底的に確認すること
2. 投資回収計画の進捗をモニタリングし続けること

毎月のMSM(月次戦略会議)では、広告宣伝投資が売上増による限界利益増で計画通り回収されつつあるかどうか、事業部門からグラフでわかりやすく進捗説明が行われます。 

また、四半期に一度のリスク資産検討会では、あくまで「事業部門別」の切り口で出資(子会社・マイノリティ出資・VCなど)やIP(知的財産)に関する回収進捗をグラフで見せ、モニタリングしています。投資回収に「絶対確実」はありませんが、これも「仮説と検証の繰り返し」で、PDCAを必ず回し、過去の反省を今後に生かすことによって、成功確率は上がってきました。 
 
当社は資金改善のフェーズを経て、現在は「中長期視点での成長を目指す積極投資のフェーズ」にあります。既存事業の成長加速・新たな事業の創出に向けて事業部門と連携しながら成長投資を実行しています。買収や資本業務提携による他社との協業強化により、新たな事業成長の芽が生まれ、キャッシュフロー創出に貢献しつつあります。 

プレミアムリポート一覧 TOP