毎日朝一番に、売り上げデータ分析の「売上モーニングサマリ」が従業員に自動でメール配信される(写真:franckreporter/iStock)

前回(PDCAサイクルのポイントは「精度」と「速さ」)、3カ月かけて独自で開発した 管理会計システム「Management Dashboard~経営の羅針盤~」(略称「MD」)によって、管理レベルが飛躍的に向上したことをご説明しました。経理社員はそれをフル活用して、決算分析や管理会計資料作成など、少数精鋭で効率的に業務を遂行しています。

MDは経理社員のツールだけにとどまらず、経理以外の事業部門にとっても「収支構造を把握し、数値に基づいてPDCAを回すという事業運営の画期的なツール」となっています。

PDCAの高速化

管理会計システムMDの極めてユニークな点は、経理以外の事業部門にも閲覧権限を付与した点です。その目的は「PDCAの高速化」です。閲覧権限は当然ながら、その担当領域のみ与えられるため、取締役は全社のP/Lをすべて見ることができますが、本部長は自分の本部のP/Lを、部長は自分の部のP/Lを、ゲームの担当者は自分の担当ゲームのP/Lを閲覧することができます。

前回ご説明したように「管理会計と財務会計の一体化」された仕組みのため、決算を完了するやいなや、事業部門はすぐに当月実績の分析を始めることができます。具体的には、取締役・部長・ゲーム担当者等それぞれのレイヤーで前月実績・予算・着地見通しと比較分析し、乖離が大きければ、組織や科目をドリルダウンして細目を確認したり、金額をクリックして仕訳を閲覧したり、人員数をクリックしてバイネームで人件費増減要因を確認したりと、一画面からシームレスに効率良く分析を行います。要は事業部門が経理と同タイミングで決算実績を知り、同じ分析ツールを使いこなして、事業運営に役立てているのです。 

もし事業部門にMDの閲覧権限を渡していなかったら、いったいどうなっていたでしょうか。経理は決算を終わった後に管理会計資料をExcel等を使用して作成し、事業部門に渡すという作業が必要になります。その後その内容に関する問い合わせを受け、調べて回答をしなければならないこともあるでしょう。多大な労力と時間がかかりますし、PDCAのスピードは格段に遅くなります。

事業部門は 5日目には自部門のP/L確認が可能(図:筆者作成))

今まで事業部門による決算実績の確認や分析を中心にご説明しました。実はPDCAの精度が大きく向上した要因は、MDの仕組みが予算や着地見通しにおいても決算実績と全く同じ配賦計算等の処理を行い、ゲーム別収支まで対応している点にあります。閲覧権限を持った事業部門が、ゲーム単位で予算→着地見通し→実績とPDCAを回しているのです。

最初にMDで予算策定を行った時は、ゲーム別P/Lへの展開ができておらず、精度はそれほど高くありませんでした。予算数値確定のために、基礎データを入力しデータ更新して、予算規律をクリアしているかどうか確認するのですが、あくまで本部別や部別という大きな粒度でしか見ることができなかったのです。ところが、予算でもゲーム別P/Lに対応した途端、「自分のP/L」実績を常に見て計数感覚を持った各ゲーム担当者のきめ細かなチェックが入り始めました。

同様に着地見通しについても、ゲーム別P/Lまで展開した途端、精度が一挙に上がりました。ゲーム単位で予算・着地見通し・実績というPDCAを回すのですから、当然と言えば当然です。過去は当月の売上しか読む習慣が無かった担当者が、四半期の着地見通しをP/Lベースで読むようになり、精度が悪かった読みが確信に変わっていきました。収支悪化が予想される時は課題に対する対策を早めに打つことができるようになりましたし、収支良化が見込まれる時には、投資を行うことによってより大きな売上や利益の獲得に動くことができるようになりました。 

担当者にゲームの状況を聞いた時に、まるで経理社員のように担当ゲームの収支構造を数値を交えながら説明され、感動を覚えたこともあります。事業部門にMDの閲覧権限を与えたことが、数字を活用して事業を行う「経営者の卵の育成」に大いに役立っていると確信した瞬間でした。 

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