「ここを目指せ」とわかりやすく優先順位を示し、フォーカスさせることがとても大事です(写真:STUDIOGRANDOUEST/iStock)

パナソニックでは「経理は経営の羅針盤」で、経営の進むべき方向を示す役割を担えとたたき込まれました。また、筆者が仕えたCFOは「CFOの役割はチーフ・フォーカス・オフィサー」と常々言っておられました。あまりに目指すものが多いと、本当に大事なものが見えなくなります。「ここを目指せ」とわかりやすく優先順位を示し、フォーカスさせることがとても大事です。あるいは「ここに課題がある」とアテンションを高めることが必要です。

ところが、入社した直後のグリーの印象は「まるで映画館入場直後の、真っ暗で何も見えない」状態でした。

全社のB/S P/Lはありましたが、年率2.5倍という急成長のスピードに管理が追いついておらず、丼(どんぶり)勘定で実態がまったくわかりませんでした。これでは羅針盤の機能を果たしようがありませんし、フォーカスさせるべきポイントもわかりません。

信賞必罰につなぐ

創業者である松下幸之助の教えのひとつに、「経営にとって大事なことは信賞必罰」があります。それを支える仕組みが、予算による「適正な経営目標の設定」とそれに対する「成果の見える化」です。

3カ月で管理会計の仕組みを導入し、一目で経営実態がわかるようになりました。毎月の執行役員会議や取締役会での決算報告は、まさに「経営の見える化」の場であり、羅針盤として何が課題か何を目指すべきか指し示すように、できるだけわかりやすく優先順位を明確にしてフォーカスできるように努めています。

誰が褒められ、誰がしかられるべきかも一目瞭然です。信賞必罰は機能し、半年ごとの業績評価・報酬連動へもつながっています。すなわち、「組織・人の働きを正しく評価し、成果を上げた組織・人に報いる」という当たり前のことができるようになりました。

やや抽象的な話なので、具体例でご説明します。

下に示したような利益分析の滝チャートも、単なる収支構造の分析だけでは「信賞必罰」にはつながりません。① ブレットの1行で重要なポイントやメッセージを伝えること、② 必ず部門別内訳を明示すること、③良化要素・悪化要素を一目でわかるように明示することが大事です。

グリーでは「信号ルール」と呼んでいますが、悪化要素はピンク、良化要素は緑、注目すべき要素には黄色でハイライトします。

マイナス表示ははっきりわかるように▲を使用します。資料を見る人はピンクと▲表示を見ると、条件反射のように悪化要素と判断します(売り上げ・利益の減少は悪化要素として▲、P/L比較分析などでは費用減少は良化要素として△を使用)。

営業利益分析のイメージ図(筆者作成)

どの部門が頑張ったか、どの部門がうまくいかなかったかを、資料を見る人は瞬時に理解します。経理が事業部門に口うるさく言わなくても、わかりやすい資料で「経営の見える化」ができれば、事業部門はそのひとつひとつのメッセージを受け取り、自ら正しい方向にフォーカスしてアクションを起こしていきます。

より細かな事業単位での見える化

大組織で時々起きる問題は、全体しか見えず、「より細かな事業単位の課題」が埋もれてしまい、見えなくなることです。あるカンパニー全体では大きな黒字でも、その下の事業部や、その傘下の商品の赤字が見えていなければ、メスが入らず経営改善の動きが起きないかもしれません。

もしそうだとすれば、それは「見える化」をしていない経理の責任で、経営の羅針盤としての機能を果たしていないと言わざるをえません。もちろん、将来の成長のための健全な赤字でも、それをちゃんと認識したうえで事業運営することが大事です。

次に、「より細かな事業単位の見える化」についてご説明します。その具体例が下に示した「商品別利益一覧」で、決算報告の中で、事業部門の関心の高い資料のひとつです。数十ある主要ゲームを利益ランクのマトリックスの表にプロットしたもので、縦の列は利益ランキングで左から利益率の高い順に並び、右端が赤字です。