6月12日にシンガポールでの開催を予定していた米朝首脳会談を、トランプ大統領はいったんキャンセルした。

北朝鮮が非核化要求への態度を硬化させたことを受けてだが、一方で開催への再調整が朝令暮改の勢いで進んでいる。

何よりもこの会談に前のめりなのは、トランプ氏自身である。就任後、強烈に推進してきた新たな経済制裁が中国の態度を変えさせ、今日のような北朝鮮の翻意につながった。膠着していた北朝鮮情勢を動かしたのは自分の豪腕であると、世界中の報道機関のフラッシュがたかれる中で胸を張る瞬間を今も心待ちにしているに違いない。

実際、石油輸入制限や金融制裁といった新たなテーマでの経済制裁が一因となったのは間違いない。中でも金融制裁は目立たないが、北朝鮮が温存してきた不正送金ネットワークを切り崩すほどの威力があった。そのことを理解するには、北朝鮮を支えてきた非合法な収入源、マネーロンダリング(資金洗浄)の実態をあらためて押さえておく必要がある。

送金者を隠蔽する巧妙な手口を構築

資金洗浄とは、違法行為によって得た資金を合法的な資金とブレンドしたり、収入源や送金履歴を隠蔽したりすることで、まっとうなカネに仕立て上げることだ。国連安全保障理事会によってヒト、モノ、カネの国際的な移動が制限されている北朝鮮では、制裁をくぐり抜ける資金洗浄の仕組みを巧妙に作り上げてきた。

北朝鮮は貴金属、武器(ミサイルや核技術を含む)、偽造通貨(米ドルなど)、麻薬(ヘロインや覚せい剤)、偽造たばこなどの商品をひそかに輸出して外貨を稼ぐ。こうした闇の経済活動を統括するのは外貨獲得のための秘密部署「朝鮮労働党39号室」である。資金の使途は金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が最終的に決定するが、最近は主に核・ミサイル開発資金や石油購入に充当されているようだ。

ポイントはそのような資金をどのように北朝鮮に送金するかだが、最近の代表的な手口としては、コルレス口座の悪用がある。「コルレス口座」とは為替業務(送金や貿易取引)の決済にかかわる銀行間取引用の口座のことである。