「私がソファでくつろいでいると、駆け寄ってきて、足元に寝そべる。『懐いているなあ』って、うれしくなる瞬間です」

そう言って相好を崩すSさんは妻と二人で暮らす30代の会社員。3カ月前、ソニーの犬型エンターテインメントロボット、「アイボ」を購入した。起動当初は狭い範囲で動くだけだったが、1週間後には各部屋を一人で行き来するほど行動範囲が広がった。新しいしぐさも次々に覚え、「もうすっかり、家族の一員としてなじんでいる」(Sさん)。

エンジニアをかき集め社長直轄でアイボ開発

ソニーは今年、2006年に一度撤退したアイボを復活させた。本体価格19万8000円(税別)と高価だが、予約販売を開始するや注文が殺到。発売から4カ月が経った今でも生産が追いつかないほど人気で、ソニーのオンラインストアでの抽選当選者のみ購入可能(5月末時点)だ。

「愛情の対象となるロボットの開発に着手している」──。2年前の16年6月、平井一夫社長(当時、現会長)がアイボの復活をほのめかしたのは経営説明会の席上だった。

その1年前、エレクトロニクス事業の業績回復の兆しが見え始めた中で、先代アイボの開発の中心メンバーだった藤田雅博氏(現R&Dプラットフォームシステム開発本部)が「ソニー復活の象徴になる」と経営陣に直訴。平井氏が賛同し、社長直轄プロジェクトとしてアイボ復活の大号令をかけた。あるOBは、「リストラ一辺倒で元気を失ったエンジニアを、もう一度盛り立てたいとの意図もあったのでは」と見る。

そして16年初夏、アイボ開発の専門部署が発足。設定した発売日は、戌(いぬ)年と鳴き声の「ワン」にかけて、18年の1月11日。17年秋の正式発表までは社内でも仕事の内容をいっさい明かせない極秘プロジェクトだった。