企業が産休・育休などの制度を法律で定められた以上に充実させたり、在宅勤務など柔軟な勤務形態を導入したりすることは当然のように行われている。

だが、これまでに触れたように、いくら制度が整っても、保育園や小学校の壁に阻まれ、共働きと育児の両立が難しくなっている現状もある。そこで制度導入だけでなく、それをいかに活用するかの視点が重要になる。

ここでは、多様な働き方を実現させるために試行錯誤している企業を紹介したい。独自の制度や取り組みを進めることで、最初は小さな変化でも、徐々に大きな変化になっていくはずだ。

キリン |「制約のある働き方」をグループ全社員が体験

「なりキリンママ・パパ」という一風変わった名前の施策を今年2月から導入し始めたのが、キリングループだ。対象者はグループの全社員。営業職や内勤など職種に関係なくローテーションで「2歳前後の子どもがいるママ・パパ」に1カ月間なりきる。

たとえば、保育園への送り迎えがあるため9時の定時出社、17時半の定時退社は必須。人事総務部からランダムに、子どもがケガや発熱をしたので早退しなさい、という指示が出される。「つねに各部署1割ほどの社員がママやパパになりきっている」(キリン・人事総務部の金惠允氏)という。

「ママ体験記」をリポートにして提出。匿名で全社に共有される

キリングループはここ数年間、女性の活躍推進や働き方の制度を整えてきた。だが、営業職は得意先との関係もあり、長時間労働などの環境を変えるのは難しかった。そこで、営業職の女性が中心となり考案されたのがこの施策だった。

当初は、取引先などに迷惑をかけかねないこの制度を運用することに対し、不安や批判もあったという。だが、実際に取り組んでみると「ほとんどの部署でよい影響が出た」と金氏は言う。

それは、子育て中の社員の大変さを理解できるようになったということだけではない。参加者はいつ仕事から抜けることになるかわからない怖さから、仕事を前倒しで進めるようになり、部署のメンバーとも仕事内容を共有するようになった。参加者の残業時間は平均51%削減され、仕事が共有されることで重複する作業も減り、生産性も向上する傾向にあるという。

同様のルールで「介護」という選択肢も導入した。現状のペースで進め、全社員が最低1回ママ、パパ、介護のどれかを経験する。

(本誌:石阪友貴)

 

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