プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?
プラットフォームの経済学 機械は人と企業の未来をどう変える?(アンドリュー・マカフィー、エリック・ブリニョルフソン 著 村井章子 訳/日経BP社/2600円+税/536ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
Andrew McAfee●米マサチューセッツ工科大学デジタルビジネスセンター首席リサーチサイエンティスト。 著書に『機械との競争』『ザ・セカンド・マシン・エイジ』など。
Erik Brynjolfsson●米マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院教授。『スローン・マネジメント・レビュー』誌編集長。 著書に『デジタル・エコノミーを制する知恵』など。

既存企業や管理職も生き残りが可能と説く

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

前著『ザ・セカンド・マシン・エイジ』では、コンピュータの指数関数的な高性能化や情報のデジタル化が、19世紀の第1次機械時代に匹敵する衝撃を社会にもたらすと論じられた。今や世界の人々がスマートフォンを通じデジタル接続され、AI自らが問題解決方法を学び、第2次機械時代は第2フェーズに突入した。

多くがオールド・エコノミーで働く我々は、どう対応すべきなのか。本書は、マシン革命、プラットフォーム革命、クラウド革命の三つに焦点を合わせ、一般の読者にわかりやすく論じたものだ。

AIの著しい進化だけでなく、人間の不正確な判断を前提にすると、意思決定や予測はマシンに任せるほうが望ましい。ただ、データやアルゴリズムも未だ十分ではなく、マシンは常識推論が苦手だ。それゆえ、コンピュータが下す判断を人間がチェックするのが望ましいという。経営者が直感だけで決定を下す企業は早晩、消滅すると警告する。

デジタル情報は複製コストがゼロであるため、出版界や音楽界では破壊的変革が既に生じている。今度は、プラットフォームを通じ、モノやサービスでもオンライン取引が浸透してきた。供給側と需要側の情報の非対称性を除去しただけでなく、ネットワーク効果で顧客が集まるプラットフォームに供給者が引き寄せられるため、一段と集客が進み、市場が席巻される。

クラウド革命も大きな衝撃をもたらす。ネットワークを介して、様々な意見の活用が可能となり、中核にいた専門家が学歴や経歴の乏しいクラウド(大衆)に打ち負かされ始めた。問題解決に必要な知識が中核から離れた場所に存在するためだ。馬車を代替した鉄道の基幹技術も馬車の周辺産業から生まれた訳ではなかった。いち早く重要性に気づき、クラウド・ソーシングを活用する企業も増えている。

それでは、クラウドとの一時的取引が増え、中核の専門家や管理職を抱える大企業は淘汰されるのか。確かにデジタル革命で取引費用は大幅に軽減されたが、経済は分権化ではなく、むしろ集中化し、社内の管理職も増加している。経済の本質は不確実性にあり、起こり得るすべての事象を事前に契約書に書き込む事ができない以上、会社組織は必要で、社員をコーチングする管理職の重要性も高まっている。

既存企業や管理職も生き残りが可能という主張には安心だが、技術革新を阻害する独占の台頭や経済格差の拡大など負の側面への対応も必要だ。

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