(アフロ)

「ぼくは日本のがん診療界はかつての非科学的な態度や診療を大反省すべきだと思う。総括もすべきだと思う。そして近藤氏に当時の非礼と不見識を謝罪すべきだと思う。少なくとも当時の近藤氏の名誉を回復することなしに、ただただ人物批判、人格否定してもただのいじめではないか」

これは医療界を代表する論客の一人、神戸大学大学院医学研究科感染治療学分野教授・岩田健太郎医師が、ブログ「楽園はこちら側」に書いた一文だ。岩田医師は、近藤誠医師(元慶応義塾大学放射線科講師)のワクチン否定論などに対し、厳しい批判を向けてきた。しかし各論を批判する前に、まずは近藤医師に謝るべきだというのだ。

岩田医師は近藤医師が1990年代に展開した主張の例として、(1)がんは手術すればよいとは限らない(2)抗がん剤を使うとデフォルトで決めるのは間違っている(3)がん検診をすれば患者に利益があると決め付けるのは間違っている(4)ロジックとデータが大事、統計も大事、という4点を挙げ、「まったく『当たり前』の主張である。現在の日本では『常識』だし、当時だって世界的には普通の考え方だった」と評価する。

そして近藤医師の言説が多くの人の健康と人命をリスクにさらしているという批判は正しいが、「同じことは90年代の日本がん診療界にもあったのではないか。多くの患者が間違ったがん診療のフィロソフィーに苦しめられ、近藤氏がいなかったらもっとたくさんの人たちが不当に苦しんでいたかもしれない」と書く。筆者はこれまで複数のがん専門医や医師から同様の意見を聞いている。

80年代末に論壇に登場した近藤医師は、『患者よ、がんと闘うな』(文春文庫)をはじめ、現代医療を批判する数々の著作を世に問うてきた。近年は主張をより先鋭化させ、2012年に出版された『がん放置療法のすすめ』(文春新書)や『医者に殺されない47の心得』(アスコム)がベストセラーとなった。だが、現代医療をことごとく否定するかのような論調に、多くの医師が反発している。

筆者も近年の近藤医師の主張は無理筋が多いと感じている。だが、一方的に断罪できない気持ちもある。近藤医師が極論を展開しなければ、日本のがん医療は問題を抱えたまま変わらなかったのではないかと思うからだ。

極論はむしろ「確信犯」?

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