便秘薬や睡眠薬など一般的な錠剤から、漢方薬、外用剤まで幅広いタイプの薬が残薬として患者宅に眠る。これらの薬の80%(金額ベース)以上が「再利用可能」との調査報告も

どの家にも飲み残しの薬はあるだろう。超高齢化の下、「医療費の抑制」という困難な課題に社会が直面する中で「これほどわかりやすく、効果的な対策は珍しい」と、国会や行政の関係者、学者たちが口をそろえる。それが患者の家に使われないまま眠っている「残薬」の有効活用だ。

生活習慣病治療薬をはじめ、日常的に飲むような身近な薬はおおむね1錠数十~数百円程度。しかも、患者負担は多くてもその3割であり規模感がつかみにくいが、日本中の残薬をうまく活用できた場合の効果は甚大だ。医療費節減効果を年間最大「6500億円」とはじく試算まで飛び出しており、医療分野に残された「埋蔵金」(国会関係者)ともいわれる。

そんな埋蔵金の“掘り起こし”が、調剤薬局を中心にここ数年で全国的な広がりを見せ始めている。患者に家にある余った薬をまとめて薬局に持ってきてもらい、まだ使える状態かどうかをチェック、新たに医師から処方された薬と重なるものがあれば、医師の同意の下で新規の処方量を調整し、残薬を使ってもらう取り組みだ。

家にある薬やサプリメントなどをまとめて茶色い袋に入れて薬局に持ってきてもらう、米国で1990年代に始まった「ブラウンバッグ運動」をモデルにしたような動きが、各地で進んでいる。

ブラウンバッグ運動自体は、副作用や飲み合わせの確認を通じた薬局薬剤師による服薬指導が目的だったが、日本ではこれに残薬活用という目的が加わったことで、社会的な注目度が高まった。在宅医療の患者宅を訪問し、残薬を整理する取り組みも進んだ。

地域単位で削減できた金額をまとめた研究成果が各地で示され始め、それを「全国展開した場合の推計額」も出された。それぞれ条件が異なるが、削減規模は年数百億~数千億円まで幅広い。滋賀県薬剤師会が2014~15年に実施した事業では、全国の残薬薬剤費が年8744億円、そのうち6523億円に活用の余地ありと推計された。これらが厚生労働省の関係会議にも報告され、残薬対策の推進に向けた制度面の整備も進むことになった。

残薬の大半は「飲み忘れ」 健康悪化で医療費増も

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