日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち (光文社新書)
日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち (吉川 徹 著/光文社新書/860円+税/288ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
きっかわ・とおる●大阪大学大学院人間科学研究科教授。1966年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了。専門は計量社会学、特に計量社会意識論、学歴社会論。SSPプロジェクト(階層と社会意識の関係に実証的に取り組む包括的な研究者組織)代表。

驚嘆と感嘆に満ちた格差社会論の決定版

評者 慶応義塾大学環境情報学部教授 渡辺 靖

日本では10年おきに大規模な学術社会調査が行われている。調査技法の精度やデータの信頼度は折り紙つき。著者は2015年に実施された最新の調査の中心人物で、計量社会意識論や学歴社会論におけるわが国のエース的存在である。

今回の調査の最大の特徴は若年層に関するサンプル数が充実している点だ。鮮度抜群の素材を名シェフがどう料理するのか。大いに期待しながら本書をひもといた。

巻頭の「はじめに」こそやや取っ付きにくかったが、それ以降は驚嘆と感嘆の連続。格差社会論の決定版が出たと直ちに確信した。

現在、日本では大卒と非大卒の比率がほぼ半々。そこに生年世代と男女のジェンダーを重ね合わせることで、著者は現代の格差現象の根幹を浮き彫りにする。ふんだんに紹介されるグラフや数字の一つひとつがどれも興味深い。

とりわけ注目すべきは「非大卒の若者」。いわゆる「若者の政治離れ」はこの層に限った現象とのこと。「若者のアルコール離れ・タバコ離れ」もこの層の男性にはまったく当てはまらないという。

著者はこの「非大卒の若者」をレッグス(LEGs: Lightly Educated Guys)と命名。いかに彼らの実態が看過され、政策と乖離しているかを次々と解き明かす。「すべての子育て世代が……」といった政治家好みの美辞麗句では到底埋め尽くせない意識の裂け目がそこにはある。

著者が「レッグス」を「低学歴」ではなく「軽学歴」ととらえている点も重要だ。大卒学歴中心主義の社会観を前提にしている限り、彼らの孤立感は深まり、日本は格差社会から分断社会へと劣化しかねない。「トランプ旋風」も米国の分断社会と密接に関係していることは周知の通りだ。「軽学歴」という言葉には「彼らの軽やかな人生選択を、『それもありだ』と前向きに考えよう」とする視点がある。

加えて「レッグス(脚)という言葉には、日本社会を下支えしている人たちという含みもあります」と著者は言う。その彼らが日本社会の盲点になっている現実……。

ここ数年、若者が主役の討論番組も増えているが、出演者のほぼ全員が一流大卒。社会を語りながら、実は自分探しの場でしかないものが多く観るに堪えない。

それではダメなのだ。残された時間はそう多くないのである。

本書が真の国民的議論の契機となることを切望する。

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