大学生の数学的基礎能力に疑問を持った新井紀子氏(国立情報学研究所教授)は、数学の前提になる国語の読解力にそもそも根源的な欠損があるので、問題文の意味が理解できていないのではないかという仮説を立てた。そこで中学校の教科書レベルの読解力を測るリーディングスキルテスト(RST)を新井氏たちのチームは開発した。そこには次のような設問がある。

〈[問2]

次の文を読みなさい。

Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性のAlexandraの愛称であるが、男性のAlexanderの愛称でもある。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

Alexandraの愛称は( )である。

(1)Alex (2)Alexander (3)男性 (4)女性〉(新井紀子『AIvs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社、2018年、200ページ)

正解は(1)Alexである。しかし、この正答率が悲惨な状況なのだ。

〈なんと中学生の正答率は半数に達していません。RSTの問題はすべて選択式です。(略)この問題の場合は四択ですから、問題を読まずに適当に選択肢を選んでも、25%は正解してもおかしくありません。それに対して、中学1年生の正答率は23%。ランダム並み、サイコロを振って答える程度だったのです。(略)進学校に通う高校生でも正解できたのは3人に2人です。〉(前掲書201ページ)